ニノキノコスター さん

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【目の前にお客様がいる事以外の、演劇ならではの魅力ってなんだと思いますか?】

まずは「誰の目にも触れない演劇」が成立するか、考えてみます。

2015年3月から、福島第一原発付近の帰還困難区域で展覧会が開催されていますが、
例えば、その展覧会で「アンドロイド演劇」が毎日上演されているとしたら?
それは演劇なのか、パフォーミングアーツなのか、インスタレーションなのか。

「構成があり/戯曲があり/演者が/ある空間で/ある時間帯に存在する」
その時点で、演劇と言えるのではないでしょうか。

ところが、演者は、アンドロイドや大道具や人形が演じることも可能です。
音声だって、生に限らず字幕でも成立するし、無声劇だって存在します。
ということは「演劇の魅力=生きている生身の人間」とは限らないようです。

インプロビゼーションは戯曲を必要としませんし、文字に残すまでは口伝でしょう。
物語性を無くし、より楽譜に近い形にコラージュする手法だってあります。
ということは「演劇の魅力=戯曲」とは限らないようです。
映画・小説・漫画にも構成は存在するため「演劇の魅力=構成」でもないようです。

それでは、同じ空間、同じ時間に起こる出来事、に想いを馳せるのは?
観客が歩きながら観ることで、情景が変わりゆく演劇も存在します。
前述したフクイチでの展覧会は、いつ直接その目で見られるか分かりません。
しかし、地球が燃え果てるまで、という限られた時間は変わらないことでしょう。

演劇ならではの魅力は、区切られた・限られた時間に上演されること、
最終的には、地球が燃え果てる日に失われること、となりました。

全ての事象がそうやんけ。

つまり、演劇ならではの魅力なぞ存在しないということになります。

という訳で、廃墟文藝部 主宰・劇作家・演出家 後藤章大さんからのご質問でした。

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……さすがに論理の飛躍がヒドイので、後ほど再考します。たぶん。

ワタクシは名古屋を拠点に活動している劇団「オレンヂスタ」の劇作家・演出家の「ニノキノコスター」と申します。
この「名古屋演劇人リレーブログ」第一回を飾った、主宰・プロデューサーの「佐和ぐりこ」と、
名古屋大学劇団新生のOBっぽい者たちと共に旗揚げし、結成6年目くらいとなります。
2011年に「名古屋演劇アーカイブ」さんからインタビューを受けましたが、今となってはアホすぎて笑えます。今でもアホですが。
→自己紹介:http://osuk-nino.blogspot.jp/search/label/profile
→劇団公式:http://orangesta.web.fc2.com/
→インタビュー:http://nagoyatrouper.com/interview/036/

元々は、実際にあった殺人事件や派遣問題などの社会問題を、ポップな構成と変な言い回しで言語化し、
派手な照明・派手な舞台美術・派手なダンス・歌・笑いを交え演出していたのですが、ある日、急にやめました。

自分じゃない誰かが、自分より上手いことやるからです。

「メガデス理論」というのがあります。
普段メタルを聴かなくても、聴いた途端に血湧き肉踊りヘドバンしてしまう現象のことです。
え、振っちゃうよね? え、振らないの? あれ?

メガデスな人々がメガデスを上手く弾くのなら、自分がメガデスを弾く意味はない。
シューゲイザーが好きならシューゲイザーを弾けばいいじゃない。
パブロハニーから変貌したトムヨークがいたっていいじゃない。

私をご紹介くださった「コン太くん」こと「後藤章大さん」が褒めちぎってくれましたが、
別に私自身はそう熱い人間でもないし、物凄い努力もしてないし、戦ってもいないです。
コン太くんは一体誰と勘違いしているのか、心配しています。

ただ、イマ現在、目指す先だけは分かります。

多言語化にも耐えうる強度をもった戯曲で、人間の本質を穿ちたい。
広告コピーのように、時代の空気を的確に切り抜きたい。
生身の人間がもつ身体性で、言語の壁を超え、本質を伝えたい。

それこそ、自分じゃない誰かが世界中でやっていることですが、
弾きたくもないメガデスを弾き続ける人生に、意味を見い出せませんでした。
だって現状、成功者じゃないもの。模索し努力し続けるしかないわけです。

演劇とは、哲学であり人類学であり社会学であり、時に数学や物理学でもあるかもしれません。
目撃した人が、ヒトとして豊かな人生を謳歌するキッカケとなり、
それが地域を超え、世界に広がっていったら大変素敵なこと、ですが。
まだまだまだまだ、旅の途上です。

しかしまぁ、目の前でなくとも、他者に届けることが大前提であるのに、
「目の前にお客様がいる事以外の演劇ならではの魅力」って完全に作り手側からの視点で、面白いですね。
皆よっぽど「そりゃ目の前にお客様がいることだよ」と言ったのでしょう。
そして「目の前に俳優がいて目の前で何か起きることだよ」とお客様も思ったのでしょう。

目の前に誰もいない、何も起こらない演劇を、誰か作ってください。
既に絵を置かない照明だけの展覧会が存在するということは、不可能ではないはずです。
マジで観たい。そういうコンセプチュアルな実験作は大好物です。私はやらんけど。

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というわけで次の方にバトンをお渡しします。

【ダンスと演劇の違い、それぞれの魅力って何ですか?】

コンテンポラリーダンスカンパニー「afterimage」のダンサーであり、
【exit】代表、そして俳優でもある堀江善弘さんにお尋ねします。

2013年のあいちトリエンナーレ 祝祭ウィーク事業で共に手を組んでから、
コンテンポラリーダンスと演劇の共存を一緒に考えてくれている盟友に、お尋ねします。

以下、宣伝です。

■俳優出演
エス・エー企画
『ある男、ある夏』作:寺山修司 演出:鹿目由紀
2015年11/27(金)~30(月)@伏見G/pit
https://ticket.corich.jp/stage/ticket_apply.php?stage_main_id=54882

■劇作・演出
短距離男道ミサイル×オレンヂスタ×コトリ会議
『対ゲキだよ!全員集合』
大阪:2016年1/15(金)~17(日)@アトリエS-pace
東京:2016年4/1(金)~3(日)@こまばアゴラ劇場
http://taigeki3kazoku.wix.com/index

■構成・演出
愛知人形劇センター&いいだ人形劇センター共同制作
人形劇×音楽~若手人形劇家の挑戦
『シェイクスピアが笑う夜』
2016年3/26(土)~27(日)@損保ジャパン日本興亜人形劇場ひまわりホール
http://aichi-puppet.net/

■席亭(プロデューサー)
小劇場の俳優が落語をやる会 “小名古屋落語会”
「第四回 ナゴヤはいゆう寄席」
2016年春開催予定
http://konagoya.wix.com/haiyuyose

長々とすいませんでした。

最近、自分でも、自分がどこへ向かっているのか、分かりません。
思ってもいなかった街角を曲がることを、ひたすら楽しんでいます。
そしてそこへ誘って下さった、全ての先輩や仲間には感謝しかありません。

そんな在り方も含め楽しんでもらえるようになるのが、2015年10月の一先ずの目標です。サイツェーン!