柿喰う客『ながぐつをはいたねこ』のゲネプロにお邪魔させて頂きました。
これまでに柿喰う客は色々な芝居の形を提示されてきましたが、今回は『こどもと観る演劇』ということで、どのように作品を纏めてくるのか非常に興味がありましたが、これまでの柿喰う客のテイストを十分に残しつつ、あらゆる年齢層が楽しめるような芝居にうまく昇華させていました。
ただの提案としてではなく、それをひとつのエンターテイメントとして纏め上げる中屋敷さんの手腕に感服したひと時でした。
●中屋敷法仁さん(構成・演出)、深谷由梨香さん(出演)の話
今回の『こどもと観る演劇プロジェクト』について、企画を立ち上げた経緯や考えを教えてください。
→中屋敷法仁さん(以下中屋敷):2011年に三重県文化会館から何か新しい作品を作れないかという話を頂いた時に、劇団としてもこどもと観る作品って無いなって悩んでいたんです。ぼくらって同年代とか時代に対して発表するということしかやっていなくて、次の世代の為にという、高いというか、のんびりした志で作品を作ったことが無かったので(笑)。また、既存のこども演劇は上から下に、大人がこどもに観せるという立場になっていますけど、色々な世代の方が集まってひとつのものを観るという、演劇文化の一番素晴らしいところを取り上げたいと思い、こども『と』観る演劇を始めました。
今回の作品を作る上で演出上気を付けていることはありますか。
→中屋敷:相変わらず劇団の虚構性に寄り掛かっているスタイルは変わらないですね。舞台セットも中世ではなく劇場ですよね。今からやるお話は嘘だってビジュアルで分かる。だけど、それを信じた後に出てくる想像力とか、お客様の感性を刺激する為に提示をしていく。そこは変わっていないし強くなっている。ブレヒトが『異化効果』というのを言っているんですけど、ここは劇場だということを殊更に強調させた上で、中世ヨーロッパをお客さんに想像させる。城や森のセットがあると半分寝てても状況が分かるんですけど、お客さんの想像力を信じるよりは疑って、「これ何に見えますか」ということはやっていますね。とかくこども演劇では説明的なものをやりますが、もっと感覚的に訴えるものがないと駄目だなと思います。
この『ながぐつをはいたねこ』という題材を選ばれた理由を教えてください。
→中屋敷:ねこを主人公にしてみるととても賢いねこの活躍劇なんですけど、裏を返すと人間ってなんて愚かなんだろうと。劇中に尊敬出来る人間が全く出て来ないので(笑)。人間って本当に浅ましいなって。見た目や情報に踊らされるところとか。これを観たお客さん全員が全員幸せな気持ちで帰る訳じゃないけど、そこが面白いんじゃないかなと思います。
役を演じる上で、これまでの柿喰う客の作品と変えているところ、意識しているところはありますか。
→深谷由梨香さん:客席との距離は気持ち的に近くするようにしています。寄った時に「来るな」って思われないようにしたいなって。本番を重ねていく内にそういう風にしていった方がいいなと思うようになりました。
→中屋敷:壁は作らないようにしてるね。またはどんな素敵な壁を作るかってところですよね。
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柿喰う客『ながぐつをはいたねこ』
原作:シャルル・ペロー
構成・演出:中屋敷法仁
会場:長久手市文化の家
日時:2013年11月9日(土)
出演:深谷由梨香・永島敬三・大村わたる・葉丸あすか・板橋駿谷
詳細はこちら
http://kaki-kuu-kyaku.com/