劇団あおきりみかん『だるい女』

Print

劇団あおきりみかん『だるい女』の稽古場見学会にお邪魔させて頂きました。

いつものようにお客様を入れての稽古場でしたが、冒頭に鹿目さんが挨拶で言っていたように、内容は真剣そのものでした。ひとつのシーンに対し、色々なアプローチを試しながら、考えながら、作り込んでいく様子が観られました。

今回の作品テーマはとても共感するものがありますが、そこをどう演出で表現していくのだろうか、とても興味を惹かれるインタビューでした。

●鹿目由紀さん(作・演出)、松井真人さん、真崎鈴子さん(出演)の話

——今回の本を書かれたきっかけを教えてください。

鹿目由紀さん(以下鹿目):自分と同年代の女性が主役の話を書いてみたいなと思いました。その年代特有の悩みと、そこから女性がどうなっていくのかを描きたかった。

——同年代ということですが、自分に重ねて書いているのでしょうか。

鹿目:そうですね。今回は小説を書くつもりで書きました。自分のことを書いているかのように。もちろんフィクションの部分も沢山あるんですけど。

——演出上で何か試してみたい、やってみたいことはありますか。

鹿目:特に特殊な何かをやってるつもりは無いですね。とにかく「だるい女」である真崎鈴子さんがちゃんと見えていればいいなと思っていますし、彼女を中心に回るようにアシストするだけですね。芯はあくまで30代の女性の悩みですが、かなり赤裸裸に書いていますし、自分は福島県出身なので、震災や原発のことも少し絡んできます。今回の話には外せない事だと思いました。福島公演が決まったのが大きかったかもしれません。

——今回の役を演じる上で気を付けていること、意識していることがあれば教えてください。

真崎鈴子さん(以下真崎):広い視野で集中力を保つように心掛けているのですが、わたしはすぐ狭くなってしまいますし、でも色々な方からパスが来たり反応したりしないといけないので、……困ってます(笑)。

松井真人さん:今回の台本はひとりの女性を描いていて、そこに震災も絡んでくる。あるひとつの悲しみを負った人、傷を負った人がどうやってそれを考えて生きていくのかに肉薄しています。そしてぼくがそのだるい女の夫役。今回は過去と現在をどんどん表現していくんですが、ぼくは未来を担っているんだなと思っていて。だるい女が明日どう生きるかということ、そこに働き掛けていければと思っています。それと最近思ったのが、悲しい人にどう話し掛けていいのか分からないということ。仙台の人がこっちに来た時にどう話し掛けていいのか分からない。傷に土足で踏み込んでいいのかとか。でも心配していない訳では無い。当事者性の差というか。それが福島と名古屋の距離の差だとしたら、名古屋からの視点を感じて貰えればと思います。

——今回の見所を教えてください。

真崎:とても困っているんですが、でもこの作品を良くしたいんです。今日も友達が見学会に来てくれたり、地元の人も応援してくれていますし、お客さんの心の残るものを作りたいと思います。

鹿目:今回、震災が絡んでいるという話をしましたが、「震災原発大変だ」と大枠で絡めているつもりはありません。この事により起こった小さな思い方の変化で困ることがたくさんある。誰にでもあったと思うんです。そしてその変化に戸惑う自分。でもよく考えて、それでまた何かが少しだけ変わる。その「ちょっと変わるところ」を見せたい。大きくではなく。今回はそのあたり、ちゃんと描けているかなと思っていまして。あとは演出と俳優ですかね。繊細な変化を観て、感じとっていただければと思います。

+++++

劇団あおきりみかん『だるい女』

作・演出:鹿目由紀
会場:G/PIT
日時:2015年7月11日 (土)〜27日 (月)
出演:真崎鈴子・松井真人・カズ祥・中元志津(Wキャスト)・成田けい(Wキャスト)・みちこ・平林ももこ・正手道隆・近藤絵理・山口眞梨・篠原タイヨヲ・川本麻里那・木下佑一郎・フタヲカルリ・鹿目由紀

詳細はこちら
http://www7.plala.or.jp/lifu/