日本の演劇人を育てるプロジェクト『出雲の阿国~いざや傾かん~』

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日本の演劇人を育てるプロジェクト『出雲の阿国~いざや傾かん~』の稽古場にお邪魔させて頂きました。

今作は戦国時代の芝居ということで、能楽堂を最大限に生かす工夫をしたり、多くの専門家を呼んで稽古を付けたりと、今作に掛ける意気込みが強く伝わってきました。
非常に密度の濃い『音楽舞踊劇』が見られそうでとても楽しみです。

今回は特に森さんの女性観に焦点を当ててお話しを伺いました。

●森釗さん(プロデューサー)の話

森釗さん(以下森):今企画が始まった経緯から説明しますと、わたくし共が所属している日本劇団協議会で『日本の演劇人を育てるプロジェクト』というものを続けておりまして、そこで、名古屋能楽堂、木村繁演出で進めるという話をふじたあさやにした所、「自分が書きたい」と。そこから今作が生まれました。また、わたくし的なことなんですが、大学で日本芸能史を勉強しておりまして。能や狂言から歌舞伎発生までを勉強していた訳なんですけれど、いずれはその時代の芸能をやりたいと思っていました。現代演劇として。

――阿国に焦点を当てたのはそういう経緯もあったからなんですね。

森:日本の芸能史の中でも阿国というのは、男に出来なかったことをやったんです。戦国の中で生き延びていくには民衆は知恵を働かせないといけなかった。そして知恵を働かせるということは同時に自由を獲得するということで、阿国を初め、その時代の人たちはその自由を獲得したんじゃないかと。そうじゃなければ歌舞伎は生まれなかった。なので、今作は芸能史と女性史、二重の意味で描けると面白いですね。

――これまでに何度か取材をさせて頂き、女性が奮闘している作品が多いと感じているのですが、何か理由はあるのでしょうか。

森:もっと女性に頑張って欲しいなということはあります。人類の半分が女なので、もっと女性がリードしてもいいんじゃないか。少なくとも女性の存在は無視出来ない。『家内安全』という言葉がありますけど、女性が社会や政治にもっと出てもいいんじゃないかというのは考えています。ただ芸能の世界は違う。そこには人間が自由を獲得することと関係があるんじゃないかと思います。

――今作の見所を教えてください。

森:阿国と徳川家康の出会いとその関係。徳川家康が阿国の芸を見ることで変化が起きる。作中に「俺も傾きたかった」という台詞があるんですが、でも彼はそこを抑えて支配する方に進む。その徳川家康役を演じる天野鎮雄がとても良いです。そして徐梨恵が阿国を演じます。また、阿国一座が出てくるんですけど、子役二人もなかなか可愛いですよ。今回は能楽堂でやるんですが、養生板を貼らずにそのまま使います。そこで日本舞踊もやらないといけないし、能もやらないといけないし、狂言もやらないといけないし、その為に18日間のワークショップをやっています。ある時代に根付いたものをやろうと思ったら色々な芸能を学ばないといけませんし、それで今の俳優の役に立ちたいなと。そういう意味では得難い機会だと思っています。

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日本の演劇人を育てるプロジェクト『出雲の阿国~いざや傾かん~』

作:ふじたあさや
演出:木村繁
会場:名古屋能楽堂
日時:2016年12月7日(水)~11日(日)

詳細はこちら
http://www.hi-you-can.com/