エス・エー企画『ある男、ある夏』の稽古場にお邪魔させて頂きました。
個性的な役者陣に、演出として劇団あおきりみかんの鹿目由紀、そして上演するのは寺山修司の本という、完成系がこれほど予想出来ない作品もなかなか無いと思います。
そしてその現場は意外な程和やかで楽しいものでした。常に笑いが絶え無い稽古場で皆さん伸び伸びと演じているのがとても印象的でした。
取材はしましたが、まだまだどうなるか予想が付かない今作品、本番が非常に楽しみです。
●鹿目由紀さん(演出)、火田詮子さん、松井真人さん(出演)の話
――かなり豪華な出演陣が揃っていますが、皆さんを纏め上げていく上で意識していることはありますか。
鹿目由紀さん(以下鹿目):纏め上げてはいないです(笑)。特にいつもとやることを変えるつもりは無いです。この作品は一回リーディングでやっていて元々好きだったし、前から興味がある俳優さんばかりでしたので、寺山の言葉と融合して個性が出たらいいなと思っています。この作品は寺山の中でも短くてさらっとしている方だと思いますが、深い所で影を感じるし、刹那的な所もあり、それらを皆さんが持っているものから出せたらいいなと思います。
――個性的な役者がとても多い印象がありますが、演技指導をされることはありますか。
鹿目:全然無いです。自分の見たいことをやってもらうくらいです。稽古の初回に化学反応が起きそうな感じを見て、これでいけると思いました。あとは、こういう風にしたいんだ、ということが伝われば、それが一番だなと思います。
――寺山修司の作品はかなり個性的だと思うのですが、そういう作品を演じる上で意識していることがあれば教えてください。
火田詮子さん(以下火田):寺山の中でも若干イメージの違う作品でもありますし、ここはもう鹿目マジックに身を委ねるしかないなと思っております。この作品をやるというのは意外でした。具体的にああいう風、こういう風と言われないのは逆に怖いところではあるんですけど、楽しくやっています。
松井真人さん:寺山修司さんの脚本を演じるのは初めてで、確かに脚本を読む前は意識するというか身構えてしまう部分もありました。でも読んでみると、今回の作品はチェーホフやシェイクスピアのような外国の話でも無いし、時代もまだ近く、なにより市井の人を描いているとても素敵な作品で、身構える事もないなと。特に台本強度がすごくて、何回読んでも色々な読み方が出来るし、言葉のリフレインや暗喩などすごく緻密に組み立てられていて、とても面白いんです。寺山さんの作品でこれまでに観たのは『レミング』とか『奴婢訓』だったので今回の『ある男、ある夏』とはまた全然テイストが違くって、最初プロデューサーさんから出演の依頼をされた時に「なんで自分が呼ばれたんだ」って思ったんですが、この作品なら…「なるほど」と思いました。
――鹿目さんの演出の特徴があれば教えてください。
火田:役者の立ち方がストレートに問われるなと思います。物凄く意外だったのは、世界観を強要しないこと。現場で作っているという感じですね。言葉や世界を探りながら、押し付けるのではなく。
――今作の見所を教えてください。
鹿目:凄く短い作品なんですけど、色々なことが詰まっているんです。俳優さんも魅力的なので、たっぷりその世界に入ることは出来るかなと思います。夏の作品を冬のはじめにやるので、逆に夏を感じて貰いたいなと思います。
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エス・エー企画『ある男、ある夏』
作:寺山修司
演出:鹿目由紀
会場:G/PIT
日時:2015年11月27日(金)~30日(月)
出演:松井真人(劇団あおきりみかん)、佃典彦(劇団B級遊撃隊)、火田詮子、ニノキノコスター(オレンヂスタ)、毛利美奈子、山中崇敬(劇団あおきりみかん)、寺本久美子、カズ祥(劇団あおきりみかん)、内山ネコ(劇団んいい)、青木謙樹(劇団んいい)、椎葉星亜(劇団んいい)、河合希実、磯貝紬、源石和輝(※29日11時以外の出演)
詳細はこちら
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=68973