劇団テアトロ☆マジコ『眠り姫 快刀乱麻!〜時計少女は螺旋の夢を見るか〜』の稽古場にお邪魔させて頂きました。
自主稽古の段階では出演陣がモチベーション高く非常に賑やかな雰囲気でしたが、演出の涙さんが到着すると今度は気持ち良い緊張感の中で稽古が進む風景が見られました。
今回で8回目となる公演。認知度も高まってきて、ある程度方向性も確立してきた劇団ですが、そこに収まらずに進んでいこうという気概を感じられるインタビューでした。
●涙銀子さん(作・演出)、美月ノンさん、丹羽智則さん(出演)の話
――今作を書こうと思われたきっかけを教えてください。
涙銀子さん(以下涙):昔からやろうと思っていたモチーフが色々ありまして、今回は『三銃士』や『スリーピングビューティ』の世界をやりたかった。ただそれらの作品から記憶に残っているモチーフを使って別な話にするという感じなので、どちらが中心という訳ではないんですけど。
――役者に対して大事にして欲しいと思われていることがあれば教えてください。
涙:生(なま)であるということ。ファンタジーと呼ばれているものを具体化するので、結果的に現実から遠いものを現実として見せていくという形態になるので、その立ち位置を、演技という表現で、自分なりの答えを持ちながら立っていて欲しい。虚構と現実を扱うメディアであるという意識。
――涙さんの演出を受けられて、その特徴として感じる部分があれば教えてください。
丹羽智則さん(以下丹羽):演出家という立場でありながら、役者に任せてくれる部分が多い。そういった意味でやり甲斐があります。でも逆に幅が広い分だけ難しい所もありますね。ぼくは他の所で和物のお芝居、歴史物を演じることが多かったので、本を調べてその人柄とか思想とかを自分なりに落とし込んでいくということをしていたんですけど、何年か振りにフィクションを演じることになって、その土台を自分で作らないといけない。自分としては面白いなと思いながらやっています。
――今回の役を演じる上で気を付けていることを教えてください。
美月ノンさん(以下美月):ずっとマジコでやってきているので、エンターテイメントとして形式的に見せることも大事なんですけど、そこにとらわれ過ぎてしまっている。周りの人も『マジコはこういう風だ』と思い始めている。なのでエンターテイメント性は持ちつつも深い心情の変化を見せたい。ただ今度は心情だけにこだわると動きが小さくなってしまったり、間延びしてしまったり。そこのバランスが難しいなと思います。
丹羽:様式だけに行き過ぎるとキャラクターが軽くなるとか、現実味が無くなってくると思うんです。そこを両方やるということ。通常どちらかに特化しがちになってしまうんですけど。
涙:能や歌舞伎とかも凄く好きなんですけど、でもそれはリアルが裏にあってのものなんです。でも今の若い子たちは自分の体験の中だけのリアルを広げていくという演技に特化してしまっている。所謂普遍性とかの表現が好きなんですが、マジコはそこが表面だけでは見えにくいんです。でも役者さんには注入したい。
――今作の見所を教えてください。
涙:テーマを直接外には出しませんけど、トランプという奴が来たり、福島の子供が差別されていたり、ポピュリズムが差別を助長しているという思いが今作を書く理由にもあります。演劇は今の時代を担っているものですが、それでいて普遍的なものにどう繋げるか。マジコの華やかな馬鹿馬鹿しい世界の中から普遍的なものを提出したい。手に触れたい。そしてお客様の手にも触れて欲しいなと思っています。
+++++
劇団テアトロ☆マジコ『眠り姫 快刀乱麻!〜時計少女は螺旋の夢を見るか〜』
作・演出:涙銀子
会場:千種文化小劇場
日時:2017年2月24日(金)~26日(日)