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映画『よだかの片思い』

 

9月16日(金)公開の映画『よだかの片想い』主演の松井玲奈さんに取材をさせて頂きました。

本作は島本理生原作の小説を映画化した作品です。

顔の左側にアザのあるアイコはルポ本の取材を受けた事で状況が一変。映画化の話が進む中、紹介で会った映画の飛坂に惹かれ、片思いを自覚します。そして不器用ながらも距離を縮めていこうとするアイコの姿がとても瑞々しく描かれています。

取材ではアイコという役を演じる上での質問をいくつかさせて頂きましたが、とても丁寧に答えてくれる松井さんと、アイコのひたむきさとを思わず重ねてしまいました。

●松井玲奈さんの話

――顔にフォーカスするキャラクターを演じる上で、その心情表現が大変だったんじゃないかなと思います。その役をどう理解して寄り添っていったのでしょうか。

松井:今回はアザのある女性を演じる、という意識ではなく、コンプレックスを持っている女性が恋をした時にどういう気持ちになって、どう向き合うのかというのを大事にしたいなと思いました。アイコが子どもの頃にアザの事を変だと言われた事で、周りと違う事に気付いてコンプレックスになっていく。そういう彼女の人生経験を原作の中から読み込んでいって、役として、自分の中の経験として落とし込んでいく。そういう作業をしながら役作りをしていきました。こんなに原作を何度も何度も読み込んで、毎回彼女がどういう経験をしてきたのか、どういう状態にいるのか、どういう感情でいたのか、確認していったのは初めての事です。ただ、それに囚われる訳ではなく、それらを記憶として入れておく、という感覚。その状態になろうとするのではなくて、その感覚だけを残しておいて、やってみて、あとは向き合った人とのお芝居の中でどんどん変化していくのを楽しんでいた感じでした。

――恋をする事によって喜怒哀楽が豊かになっていくのが印象的だったんですけど、どの辺りからそういった調整をしていったのでしょうか。

松井:飛坂さんだったりゼミの人達と向き合っていく中で関係性がどんどん変わっていっているので、多分相手の空気感に応えていった結果、アイコというキャラクターが豊かになっていったんじゃないかなと思います。

――姿勢がとても良いという印象を映画の中で受けました。常に人に見られているという事を無意識に感じているからなのかなと思ったのですが、そういう事は演じる中で考えたりされましたでしょうか。

松井:芯のある、ある意味自立した女性でありたいと思ったので、地に足を付けて立ってる所をわたしは表現したかったんだなと思っていて、それで自然とシャンと立つという選択を取ったんだろうなと思います。

――ご自身がアイコを演じた中で、わたしだったらこう行くのに、みたいな部分はありましたでしょうか。

松井:自分だったらこう行くのに、というよりも、こう行かないのに、という感じなんですけど。アイコが飛坂さんに告白するシーンが凄く印象的だと思っていて。大体告白する時ってそういう空気感になる。でも彼女は恋愛経験が少ないが為に、突然好きですって自分の感情の昂りを持って相手に思いを伝えてしまう。それが彼女の可愛らしさでもあるんですけど、わたしはもうちょっとこう一歩引くというか、空気を読みながら探るタイプなので、そこが自分と違う所でもあり、わたしだったら行かない部分でもあります(笑)。

――ご自身とアイコの共通点があれば教えてください。

松井:わたし自身は感じてなかったんですけど、中島さんに先日お会いした時に、わたし自身が持っているパーソナルエリア、壁、みたいなものと、アイコが持ってる壁が凄く似ている気がすると言われ、「ああ、わたしは壁がある人間なんだ」って思ったんですけど(笑)、でもその通りだなって思いました。

――本作を出演された事で、ご自身に何か影響はありましたでしょうか。

松井:割となんでも自分でやろうとしてしまう人間なんですけど、今回安川監督とご一緒させて頂いて、分からないことを分からないままやってみるという経験をしたんですね。そこで台本に書かれていない、自身でも経験した事のない感情が溢れてきて、人に身を委ねたり、きっちり決め過ぎずにやってみる柔軟性も大事なんだと、この作品を経験して強く感じました。

――島本さんの作品の凄さはどの辺にあると思いますか。

松井:特に主人公の感情の積み重ねがとても豊かで、物語の中でキャラクターが大きく舵を切る決断をした時にも、それを唐突に感じない。そこが凄い所だと思っていて、この作品の中でもアイコは色々な決断をしていくんですけど、そこにちゃんと積み重ねがあるからひとつひとつに納得が出来る。彼女に共感や感情移入が出来るのが島本さんの作品の素晴らしい所だと思います。

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『よだかの片想い』

2022年9月16日(金)より公開

原作:島本理生『よだかの片想い』(集英社文庫刊)
監督:安川有果
脚本:城定秀夫
主題歌:角銅真実「夜だか」(ユニバーサル ミュージック)
音楽:AMIKO
出演:松井玲奈、中島歩、藤井美菜、織田梨沙、⻘木柚、手島実優、池田良、中澤梓佐、三宅弘城

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