劇団クセックACT『タイトルをつけそこなった嘘』の稽古場にお邪魔させて頂きました。
今回も稽古場に入った途端、その舞台美術に驚かされました。クセックACTらしいのですが、常に想像の上を見せてくれる劇団だなと改めて感じました。
クセックACTの発声や動きも相変わらず心地良く、五感に訴えてくる感覚は健在です。
今作は短編であったり、フアン・マヨルガの作品を上演したりと、『セルバンテス没後400周年』のシリーズの中でもまた違ったものを見せてくれそうです。
●神宮寺啓さん(構成・演出・舞台美術)の話
――今公演は『セルバンテス没後400周年』の第三弾ということですが、今公演では短編を数作品上演されると伺いました。どのような作品を上演されるのでしょうか。
神宮寺啓さん(以下神宮寺):一本はフアン・マヨルガという現在も生きている劇作家の『善き隣人』という作品です。二本目はセルバンテスの模範小説集にある『偽りの結婚』。短編小説です。三本目は『サラマンカの洞窟』という作品。これは幕間劇ですね。
――他にも作品の選択肢はあったと思いますが、その中でこれらを選ばれた理由を教えてください。
神宮寺:セルバンテスの代表的な作品に『ドン・キホーテ』や『ヌマンシア』がありますが、模範小説や幕間劇はやっていなかったので、なんとかこれらをやりたいなと思っていました。そして2018年、政治でも嘘が沢山ありましたよね。そういったことを仲間内で話をしていたら、ある人が「結局嘘をつかないと人間生きていけない。どうやって嘘をつくかが問題だよね」ということを言っていて。確かにそうだなと。世の中は正直者が馬鹿を見るというようなことが多く、我々も嘘をつかない事は無いんだけれど、噓も方便がどこまで許されるかという問題もある。でもセルバンテスはそれをユーモアでもって、嘘も属性のひとつとして小説を書いています。そこで作品のテーマを『嘘』にしようと考え、そこから『偽りの結婚』と『サラマンカの洞窟』を選びました。そしてフアン・マヨルガの『善き隣人』作品も嘘についての作品なんです。移民の話なんですけど、移民が移民を告発する。「わたしはあなたの秘密を知っているから言う事を聞きなさいね」という偽善の話なんです。
――フアン・マヨルガの作品を作品のひとつに選ばれたのはどうしてでしょうか。
神宮寺:彼が昨年の12月にセルバンテス文化センターに呼ばれて来日されたんです。そこで芝居をひとつ打とうという企画がありまして、田尻さんが翻訳者としてレクチャーをされていた繋がりで。沢山受賞もされていて、スペイン演劇の中核をなす劇作家です
――最後に見所を教えてください。
神宮寺:演出意図としては『現代劇』と『小説』と『幕間劇』を同じ出演者と舞台でどのように構成して見せるかが今回のポイントです。同じ舞台、シチュエーションの中でどう面白くするか。色々な仕掛けもありますけどね。大仕掛けもひとつ用意してあります。
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劇団クセックACT『タイトルをつけそこなった嘘』
翻訳・構成・脚色:田尻陽一
構成・演出・舞台美術:神宮寺啓
会場:愛知県芸術劇場小ホール
日時:2017年5月1日(水)~4日(土)
詳細はこちら
http://www.ksec-act.com/