流山児★事務所『花札伝綺』

流山児★事務所『花札伝綺』の宣伝で来名された流山児祥さんにお話を聞かせて頂きました。
 
相変わらず活動的な方で、現在も世界中を走り回って演劇活動をされています。また、この日は木村繁さんも同席されており、かなり緊張して臨みましたが、とても楽しげに演劇について語ってくれました。
 
演劇をただの興行としてだけではなく、人と人を繋ぐものとする流山児さんの話は、演劇とは何か、という問いを改めて考えさせられる機会となりました。

●流山児祥さん(出演)の話

→流山児祥さん(以下流山児):今回よく考えてみたら寺山修司の作品を東海地方でやるのは初めて。北海道とか東北では何回も上演してるんですよ。何故か東海では寺山演劇をやっていない。だから一回観てもらえると。『花札伝綺』津・中津川公演はそのいい機会になると思います。

色々な本がある中で敢えて寺山修司を選んだ経緯があれば教えてください。

→流山児:寺山さんの言葉って面白いなって30年やってて毎回想う。寺山さんの作っている劇世界は色々な風に、自由にやれる。「伸びしろ」がたくさんあるってことだろうな。別に「没後30年」だからやるってことではない。海外でも『狂人教育』や『花札伝綺』は流山児★事務所の海外レパートリーの2作品。他にも作品あるけど、寺山作品が海外で一番「ウケている」ってのは事実。評価されてるし、賞もいっぱい取っている。日本以上に「ウケる」ってことは分かりやすいってこと。エンターテインメント性と実験性の両方を「伸びしろ」は持っているんだと思うよ。

寺山作品をやるというのは、海外を意識してということなのでしょうか。

→流山児:それはあるね。海外で最も知られている日本を代表する演劇人の一人だからね。ある程度、演劇の知識がある人だったらだいたい、知っている。日本の若者たちはほとんど世界の演劇を知らないっていうのが現状だがね。イランで芝居を打っていたりすると、「寺山修司のことを聞きたい」って何十人の研究者が集まってきたりする。ぼくにとっては寺山作品をやるのは、歌舞伎の戯曲をやるのと一緒。どっちが多いかっていったら寺山さんの方が今のところ多いだけ。俺にとっては寺山さんの台本も歌舞伎の台本も同じ。テキスト=舞台台本を「きちんと読み込み新しい「現在」の劇世界として創る」試みをやれる「正統」な劇団が全くない。世界演劇の地平にいる日本の劇団は本当に少ない。

海外でやる場合に、日本と演出を変えられることはあるのでしょうか。

→流山児:変えないけど、「こんな日本はないでしょ」ってくらいにはやってる。うちは「歌って踊ったり」するのが原則だから。別に全く台詞がなくてもいいと思ってる。三島さんの『卒塔婆小町』を全く台詞無しでやってインドネシアで絶賛されよ。面白いよね。わざと日本的にやったりとか、無国籍風にやったりとか、色々な方法がある。でも一番面白いのは、色々な国に逆に影響されたもの。『狂人教育』とか10カ国くらいでやってる。相当回っているのね。その国でワークショップをやると色々な影響を受けて、無国籍化が進んでいく。だから日本人の持っているものが色々なものと融合していく。海外公演っていうのはどんどん無国籍化していくってこと。どこかでアイデンティティが崩れていく。2000年に初めてカナダに行って、スタッフキャスト20人全員、ホームステイしながら1ヶ月半の演劇祭ツアーをやった。それがうちのワールドツアーの「原点」。俺も50歳ぐらいだったから、元気にやれたのが面白い体験になった。このときの若手が今の流山児★事務所=劇団の中軸に成長して劇団を支えている。まさに「劇団の凄さ」だと思う。あと、ワールドツアーでのホームステイ先の学生がその後徳島の人と結婚して、子供が出来て、いまでもツアーのコーディネイト・通訳・字幕翻訳をやってくれている。13年の付き合い。これも凄いよね。中国でもそう。うちの劇団員が中国で結婚しちゃったから北京にいる。だから北京の支部長。インドネシアにも結婚して女優やっている劇団員がいる。だから流山児★事務所は北京とインドネシアに支部がある(笑)。

あっちこっちで結婚していますね(笑)。

→流山児:演劇の力、愛の力って凄いよ!ベラルーシ公演の時、たった5日間で恋が芽生えて結婚した舞台監督もホントーにいるんだから。ツアーだとそういうことが起こりうる。金とか名誉とか関係なく、人間と人間が「国境を越えて」関わる過程は面白い。海外を体験するということはそういうこと。皆、どんどん海外に行くべきなんだよ。下北沢でやるような感覚で海外で出来るようになれば、たくさん面白いことが出来ると思う。もちろん、ホームグランドはアジアがいい。今月はソウル、来月は北京、その次は台北、その次は香港って具合。俺が生きているうちに必ず、そうなると思ったけど、まだ、出来ていない。演劇人って「ふらっと交流出来る」存在だと思う。『私』なんかいらない。『他者』を探しに《世界》に行ってほしいね。俺、29歳のとき寺山修司に「フランスへ行け」って言われたよ。分からない人と会うのがいいんだよ。でも日本の演劇人はほとんど「ありもしない公共やら劇場やらを背負って」アップアップしている。当たらなきゃいけない。当てなきゃならない!海外も別に全部当たらなくてもいいんだよ。当たらなかったら来年また行けばいいじゃん。とにかく、演劇は社会と繋がっていかないといけない。日本が一番貧しいと思うな。有名になることでしか戦えない。これをなんとか壊さないと。演劇をやることが世の為、人の為にならないが、必要としている「世のため人の為になる」事を信じてやるだけですね。鵺のようなファシズムが進行中のこの国で「演劇する」事はより自覚的に運動することだと思っている。『花札伝綺』に続いて11月には池袋中公園→豊島公会堂で中津留章仁と組んで『無頼漢』2014年1月は『花札伝綺』初のモントリオール公演、ニューヨークでの再演、3月には天野天街(少年王者舘)と組んで下北沢で『田園に死す』と6カ月寺山修司と遊ぼうと思ってます。ぜひ、『花札伝綺』ご来場ください。

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流山児★事務所『花札伝綺』

●東京公演
会場:Space早稲田
日時:2013年10月3日(木)~5日(土)

●三重公演
会場:津あけぼの座スクエア
日時:2013年10月8日(火)~9日(水)

●中津川公演(演劇CAMPin中津川2013オープニングイベント)
会場:中津川常盤座
日時:2013年10月11日(金)

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http://www.ryuzanji.com/