跡の花嫁『情状酌量シンセサイザー』

Print

演劇ユニット跡(のち)の花嫁『情状酌量シンセサイザー』の稽古場にお邪魔させて頂きました。

代表である宮田麻衣さんを先導に集められた今回の座組は10代後半が中心で、笑いが絶えない和やかな稽古場でした。

今作品は親子の問題を扱ったメッセージ性の深いもので、稽古が始まると明るい雰囲気が一転し張りつめた空気になったのが印象的でした。ラスト10代の少年少女が親子についてどういった切り口で、何を描くのか、とても気になります。

●宮田麻衣さん(作・演出・出演)、丸野明莉さん(出演)の話

今回の作品をつくるきっかけがあれば教えてください。

→宮田麻衣さん(以下宮田):大学1年生の冬、秋学期にとっていた倫理学で先生が見せてくれた1本のビデオがきっかけでした。そのビデオで出生前診断のことがやっていて、その時に色んなケースの、妊婦さんが子供を堕ろすまでに至る心境だとか、結局堕ろさなかったパターンとかをみて胸にぐっと来るものがあったんです。それと、そのビデオのダウン症の施設で働いてる人が「出生前診断でダウン症の子を堕ろすのが当たり前になることはダウン症の子が生きる価値がないんじゃないか、そういう決めつけになってしまうのを私は恐れている」と言っていて。それではっと思って、今回の作品のゴミだめの着想が浮かんで、つぎの作品はこれにしようと。

フライヤーにR16(結婚できる女子推奨)とありますが今回は女性向けなのでしょう。

→宮田:跡の花嫁自体が女性向けで、私も女性ですし(唐突に座組の皆さんから笑いが)。あれれ、なぜかメンバーから笑いがおきてるのですが、おかしいな(笑)。皆さんからすごく驚かれるんですけど、私自身めちゃくちゃ女々しいんですよ。それでいて、台本も女々しいんですよ。やっぱり母親と子供の関係が理論じゃ説明できないほどのパワーを持っているものだと気付かされるたびに、女性の心境とか母親の強さを書きたいなって思います。

座組の皆さんは10代後半が中心なので母親という立場は想像するしかないと思うのですが、それについてどう思われますか。

→宮田:魂はきっと前世で母親を経験していると思うので、できないこともないなと。やっぱり若いところはみんなあってそこは捨てきれないし、子供ながらにがむしゃらに表現するのが変に飾るよりも伝わるものがあると思っています。子供が思う母親であったりもするし、母親から思う子供っていうのを気づいたらその都度伝えていきたいなと。まだ若いので(笑)。フレッシュな感じでいこうと思います。

宮田さんの演出を受けてみて、ほかの演出の方との違いはありますでしょうか。

→丸野明莉さん(以下丸野):わりと役者に任せてくれる。いい意味で。導線をしっかり提示してくれて、そこから私たちも考えるべきこともありますし、何より楽しいですね、演出さんはこういうことを思って演出しているんだなーって考えるのも楽しい。

この作品の見所を教えてください。

→丸野:お芝居の虚構性を疑いたくなるような、他人事には思えないと思います。終わったころにはこの世界観と現実の距離感がこんぐらいの距離がこんぐらいになると思います(両手をばっと広げたのをせばめて)。芝居だからっていう虚構がね。

現実にもこんなことあるんじゃないかと

→丸野:そこだね。”虚構性を疑いたくなる”っていうワードを入れておいてください(笑)。

→宮田:見所は、奇想天外なびっくりハラハラ、アハ体験(笑)。あとは今回装置がしっかりしているので、世界観という部分でまず楽しんでもらえればなと。

+++++

跡の花嫁『情状酌量シンセサイザー』
作・演出:宮田麻衣
会場:ユースクエア 名古屋市青少年交流プラザ
日時:2014年6月28日(土)〜6月29日(日)
出演:宮田麻衣・飯田桃子・丸野明莉(フリー)・星野奈々(愛知淑徳大学演劇研究会「月とカニ」)・只野なまこ(劇団緑の風車)・下地夢(フリー)・北原州真(劇団SHOWYOU)・ふかくさたける(フリー)

詳細はこちら
https://twitter.com/nochinohanayome

[写真・文:星野奈々]