虚構オメガ『呼吸する肉塊』の稽古場を見学させていただきました。
10月24、25日の公演に向けて、台本を外し細かな演技の調整を行っていました。
会話がとにかく多い。会話しかない。そんな印象を受けました。しかし、大げさな演技でテンポよく会話が進んでいくわけではなく、どこかの喫茶店で会話をしているグループを覗いているような気持ちになれるぐらい、自然な会話です。
悩み、葛藤しながら生きていることが垣間見れ、見に来た人はきっと誰かに共感するのだろうと思いました。
●長谷川公次郎さん(作・演出)、山口柚実さん(出演)のお話
――『呼吸する肉塊』を書こうと思われたきっかけを教えてください。
長谷川公次郎さん(以下長谷川):これまでの作品と共通しているんですけど、僕は生きるとか死ぬとかということを常に考えていて。今回も根底のテーマにはそれがあります。死ぬ、とはどういう意味なのか。特に今回は『死んでもいいってなったら、自分はどうするのだろう』ということを描いています。ただ、そういう環境があったとしても人によって考え方は違うので、それをいろんな視点から描けられたらと思いました。
――今までの生死を描いた作品と今作品との違いは何でしょうか。
長谷川:もともと『なんで人は生きなきゃいけないんだろう』みたいな考えがあって。その中でも今回はもう少し大きな視点から死を提示しています。ある一つの設定があるなか、人々はどうしていくのか、と。
――稽古を見学させていただいて、会話がとても多いなという印象を持ったのですが、何か理由はあるのでしょうか。
長谷川:どうこの作品を魅せるかと考えたとき、下手に動きとかで見せるのではなく、会話のみで見せようと稽古の過程の中で決めていきました。それがこの作品にとって一番いい演出なのではないかと思いました。台詞以外のところで派手にすることもできたけれど、あえてそういったところを排除して作っています。
――会話偏重の芝居で、演じる上で気をつけていることなどはありますか。
山口柚実さん(以下山口):演技っぽくならないように、その辺にいそうな人になりきれるように努めています。偉そうなこと言えないくらい、私自身未熟なので、頑張ります。
――では最後にお二人から見どころをお願いいたします。
長谷川:やはり会話ですね。出来る限り不自然な部分を排除しています。今回の稽古のほとんどがその作業と言っていいくらいです。見ている人が違和感なくその世界に入れる会話劇が見せられればと思います。
山口:私は、公次郎さんが演出でつくりだしている舞台上の”リアルさ”だと思います。言葉で説明するのは難しいんですけれど、『もし、世界がこんなふうになったら、誰かがどこかでこんな話をしているのかもな』と自然と想像できる。その現実味が見どころかなーっと思います。観劇し終わったあとに、世界がそうなったら自分はどうするのか、を想像して楽しんでもらいたいです。あと役者でいうと空沢しんかさんが見どころです。素敵です!
+++++
虚構オメガ『呼吸する肉塊』
作・演出:長谷川公次郎
会場:ナンジャーレ
日時:2015年10月24日(土)~25日(日)
出演:宮出貴衣・山口柚実・空沢しんか(フリー)・後藤章大(廃墟文藝部)・此井人(劇団バッカスの水族館)・菅沼凌(フリー)・竹田淳哉(妄烈キネマレコード)
詳細はこちら
http://omegafiction.com
[写真・文:北村文]