劇団あおきりみかん『天国の東側』の稽古場見学会にお邪魔させて頂きました。
今回の見学会もいつものように和やかな雰囲気から始まりましたが、いざ稽古に入るといつにも増して熱の入った稽古が進められているように感じました。
今作品はいつにも増して会話を重視した作品のようです。主軸となる11人が舞台上でどのように演じ分け、会話を繰り広げていくのか。また、集合体から集団になる過程が描かれるということで、どう展開を見せていってくれるのか、非常に気になる作品です。
●鹿目由紀さん(作・演出・出演)、近藤絵理さん、椎葉星亜さん(出演)の話
今作のタイトルについて、映画のタイトルを連想させますが、何か意図のようなものはあるのでしょうか。
→鹿目由紀さん(以下鹿目):フィーリングですね。何か起こりそうなタイトルがいいなと思っていて、『天国』って考えた時に既成のタイトルがたくさん浮かんだんですね。『天国から北へ3キロ』とか、『天国から来たチャンピオン』とか、もちろん『エデンの東』とか。天国から北へ3キロは距離のことを書いてあったので、天国にも方向があるんだろうなと思った時に、北じゃないだろうなと思い、西だと西日のイメージがあるし、東側だと何か生まれそうな気がしたんです。
先に天国を舞台にして書こうと思ったのか、今作品のテーマである集団を書こうと思ったのか、どちらなのでしょうか。
→鹿目:天国のことは全く書こうと思ってないです(笑)。集団に興味があって。集団にどうしてもならざるを得ないので、世の中は。結局のところ、何人か集まると集団になるじゃないですか。集団になると必ず役割があって。人と絡まないといけないから。でもその面倒臭さが面白いなっていつも思ってるんです。今回はガチで集合体から集団になっていく経緯が書いてみたいなって思ったのが一番です。
それを考えていくうちに天国という単語が出てきたのでしょうか。
→鹿目:タイトルを『天国の東側』と決めてしまったので(笑)。残念なことに。ただ天国ありきの話にはなっています。でも天国のことが書きたいとか天国がどうなっているかを書きたい訳ではないんです。集団の話を書こうと思って、タイトルが決まっちゃっていたものだから。仕方なくやっています(笑)。
今公演で演出上取り組んでいることなどがあれば教えてください。
→鹿目:今の所ざっくりと。つまり個性を見せて貰っている段階なんですよ。2〜3週間で本番が来るんですけど、ここからはちょっとしたことで人間関係がこれだけ変わるというのを意識しながら細かく距離感などを演出する段になると思います。というのは、今回11人繋がれた状態から始まるのですが、大人数の会話っていうのはある程度コントロールが必要なんですよ。そのコントロールがちょっとでもずれると全く違う会話に見えると思うので。例えば今日の稽古だと、『男4』と『男6』がどういう風に今後の関係を進展していくのか。それによって間にはさまれた『男5』が困るのか。そこのせめぎ合いをちゃんとコントロールしながらやっていかないとその関係が全体に響くと思うので。
今回は特に会話劇としての特徴が強い作品のようですね。
→鹿目:そうですね。ただの集合体が「集団になってください」と言われてどうするかという話なので。会話が無いと集団になり得ない。だから力技では無いと思います。細かく積み上がることで面白くなっていくと思います。
鹿目さんの演出を受けられるのは初めてだと思いますが、実際に演出を受けられてみて感じたこと等を教えてください。
→椎葉星亜さん:色々と泳がせてくれるというか。泳がせてくださるんですけど、色々な所を見ているんだろうなと思って。……楽しいです(笑)。ぼそっと言われることに「ああっ」て思ったりすることが多いので、良くメモを取るようになりました。これまでも取っていたんですけど、より取るようになりましたね。あと、色々な方に言われていることもその人だけじゃなくて絶対こっちに掛かってくることなので、全体に言われている時ほど良く聞くようになりました。
今回自身の役を演じる上で気を付けていることがあれば教えてください。
→近藤絵理さん:この前の3つの作品が結構主軸になる人がちゃんといて、その人を追っていくドラマみたいな感じの作品が続いたんですよ。それはそれで苦労があったし、真ん中の人は凄い大変だと思うんですけど、今回は11人を見せるからごまかしが効かないというか。この11人の中でどうやってそれぞれの個性のある人たちをうまく演じ分けていくか、みたいなことは凄く難しいけどやりがいがあるなって。うまくいけば凄く面白くなると思います。
+++++
劇団あおきりみかん『天国の東側』
作・演出:鹿目由紀
会場:愛知県芸術劇場小ホール
日時:2014年6月26日(木)~6月29日(日)
出演:松井真人・篠原タイヨヲ・カズ祥・花村広大・椎葉星亜(劇団んいい)・木下佑一郎・近藤絵理・鹿目由紀・川本麻里那・みちこ・フタヲカルリ・近藤彰吾・平林ももこ・真崎鈴子・山口眞梨