劇団あおきりみかん『サーカス家族』

劇団あおきりみかん『サーカス家族』の稽古場にお邪魔させて頂きました。

この日は一般の方も入れた稽古場見学会の日でしたが、あっという間に予約が埋まってしまうという人気企画のようです。

少し緊張感のある中で始まった稽古でしたが、段々と和んできて、終わりには写真撮影や質問などにも気軽に応じる姿がたくさん見られました。

●鹿目由紀さん(作・演出)、松井真人さん、みちこさん(出演)の話

稽古場見学を開催されている意図や目的があれば教えてください。

→鹿目由紀さん(以下鹿目):普段どういう風に作っているのか実際に観てもらって、本番との違いを感じてもらえればと思っています。途中経過って忍耐力の必要な作業だと思うんですけど、それを観てもらうことで「こういうところに悩んでいたんだ」と気付いてもらえることもあります。はっちゃけた役でも真面目に作っているんだなとか(笑)。

→松井真人さん(以下松井):舞台の制作現場を見ていただいて、なにかの参考になれば良いなぁと思います。ワークショップも出来ればいいのですが、その時間もなかなか取れないので。それに稽古場見学という形は俳優や演出の関係性など制作の総合的な部分が見れるのはいいと思います。

今日の稽古は普段に近いものなのでしょうか。

→鹿目:普段に近いですね。みんな、いつもよりも緊張してるなって感じはありましたけど、そんなに変わらないです。現時点で、まだ芝居が全然出来ていないので、そうせざるを得ないところもあります。出来てりゃね、他のことも考えたかもしれませんけど(笑)。

本来の鹿目さんはもっと怖いのではと思って見ていたのですが。

→松井:そんなことはないですよ(笑)。旗揚げの頃からもろもろ変遷があって、体育会系みたいな時もありましたけど。今はそうでもないです。よく言われる演出家の「怖い時」、鹿目が強く言う時というのは相手を思いやってる時だと思うんです。強く言わないと良くならないと思った時。演出家って色々なことを考えているので、ここで強く言ったほうがいいのか、もう少し泳がせておけばいいのか。どうするのがその作品・俳優のためになるのか。たぶん怒る時は気を使っていると思います。だから怒らせると俳優としては「怒らせて申し訳ない」という気持ちになりますね。

→鹿目:でもそれは2種類あると思います(笑)。本当に怒る時もありまして、年に1回くらいなんですけど、本気で怒ると背骨が痛くなって起き上がれなくなるんです(笑)。たぶん怒鳴るからでしょうね。凄くここ(背中)に力が入るんだと思います。逆にもの凄く、静かに冷たい場合もあります。

→みちこさん(以下みちこ):前に市民劇の演出助手でついていった時に同じ質問をされまして、「本当はもっと怖いんでしょ」って。そんなことないですよ。皆同じように思うんだなって思って(笑)。演出家は怖い、怒鳴るイメージがあるんだなって思って。由紀さんはそうじゃないです。

→鹿目:でもやらない人には怒ります。なにもしない人。

→松井:ミスは怒らないですね。みんなチャレンジしてミスして上手くなる。でも何もやらないとか、現状維持なことに関しては怒りますね。

鹿目さんの演出で凄いと思っているところがあれば教えてください。

→みちこ:自由にやらせてくれて、そうしたいならそれも生かしてやっていこうかというところ。汲んでくれるというか。

→松井:演出的な“狙い”の部分がって、それはだいぶ緻密に考えられているのですけれど、その中でも計算を超えた部分、直感とも言うと思うんですけど、そこの直感力は凄いですね特に。霧の中から抜け道を探す力というか、その台本の芯をどこから切っていくかという。直感って経験の積み重ねからしか生まれないと思うんです、だから仕事とか日常の取組の積み重ねがそういうところに出てるなぁと思います。あと責任感ですね。うちの劇団に以前凄く困った子がいて。当時僕なんかは「いや困った」とか「どうしたら良いのか」とウンウン考えてて。どうしたものか、と。でもいつのまにか鹿目はしっかりその子の良い所を見つけてて、ちゃんと一緒にものを作るんですね。その子に台本を書いて面白い演出をするんです。そうやって作ったその子の芝居は僕はどうしても真似出来ない、負けた!と(笑)。僕が困った子だなぁと思ってたその子を、一年後には天才だって思ったんです。仮に僕が演出家だったら、出来なかったと思いました。それまで僕はパッと見てヤル気があったりハキハキしていたり、平均点が高い人を良しとしてきていたと思うんです。でも鹿目さんの演出は、パッと見て内向的だったりちょっと常識がなくてホントにバイト先とかにきたら「オイ!」って思うような子も舞台に乗ったら楽しいじゃないか、舞台はどんな人だって真剣に取り組めばすっごくおもしろいじゃないかと。鹿目さんの演出はそうやって人を見ている。凄いと思いました。僕はそれでお芝居が余計にずっと好きになったんです。

普段の稽古で鹿目さんにやめて欲しいことがあれば教えてください。

→みちこ:やめてくれというか、忙し過ぎるんじゃないかと思って。仕事がいっぱいで、大変そうで心配です(笑)。

→松井:忙し過ぎてなかなか稽古に来れないとこかなぁ(笑)。でもそうは言っても仕事が人を育てるから…鹿目さんは1年中稽古やってるからそりゃ伸びますよね。野球の素振りと一緒でやった分だけ上手になる。でもやっぱり心配です、忙しすぎて倒れるんじゃないかと。

→鹿目:倒れられると困るのは分かっているので倒れません。でも病院に行くとまずいことが分かるので行きません(笑)。

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劇団あおきりみかん其の弐拾九『サーカス家族』

作・演出:鹿目由紀
会場:G/PIT
日時:2013年6月16日(日)~6月30日(日)
出演:みちこ・松井真人・手嶋仁美・山中崇敬・近藤絵理・篠原タイヨヲ・川本麻里那・カズ祥・登澤良平・正手道隆・鹿目由紀

詳細はこちら
http://www7.plala.or.jp/lifu/