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映画『隣人X -疑惑の彼女-』熊澤尚人監督インタビュー、舞台挨拶コメント

映画『隣人X -疑惑の彼女-』の熊澤尚人監督へのインタビューと、上野樹里さん、林遣都さん、熊澤監督が登壇した名古屋での舞台挨拶の模様を取材させて頂きました。

本作は第14回小説現代長編新人賞を受賞した「隣人X」(パリュスあや子著)の映画化作品となります。

惑星難民Xが社会に溶け込み疑心暗鬼に陥った状況の中で、疑惑を持たれた柏木良子と、彼女を追跡する記者、笹憲太郎を中心にした物語です。人間ドラマを軸に、ミステリや恋愛要素等を含んだエンタメとしても楽しめる作品に仕上がっています。

熊澤尚人監督の話

――原作小説からどのように映画化していこうと考えられましたか。

熊澤尚人監督(以下熊澤):原作をちょうどコロナの最中に読んだんですけど、見えない偏見や、色眼鏡で人を見ることがテーマになっている小説だと思いました。僕自身もコロナを経験して、他人との距離感みたいなものの意識が凄く変わった。そういう事をテーマに映画を作れたら今大切な事が伝えられるんじゃないかと思ったのが最初です。

そしてそのテーマに照らし合わせて、特に30代中盤女性って仕事、出産、高齢の親、そういう事に直面する。本当は自分で考えて決めたいんだけど、周りから色々言われて揺らいじゃう経験を、苦しい思いを30代中盤にされると思う。原作小説は、45歳、26歳、19歳の女性3人の群像劇なんですけど、映画では30代中盤の女性を主人公にする事で、ポピュラリティもあるし響くんじゃないかと考え、脚本を作っていきました。

――脚本作りは順調にいったのでしょうか。

熊澤:2年掛かりましたね。入口はSFなんですけど、林くん演じる笹と、上野さん演じる良子の日常の話を描きたかったので、等身大の悩みというか、苦しみなり、ささやかな喜びを一番大切に描いていきたいなと。僕の中でテーマはブレなかったんですけど、多くの要素がある映画なので、色々なバージョンを書いてみて、最終的にはこういうバランスの作品が一番フィットするんじゃないかと見つけ出す作業に時間が掛かりました。

――上野樹里さんを主演に選ばれたポイントがあれば教えてください。

熊澤:主人公の良子は周りの価値観に振り回されず、心で感じた事を大切に、自分でちゃんと考えて決断出来る人なんですよ。脚本の第一稿を書いてる最中に、これは上野樹里だと僕の中でなっていった。上野樹里さん自身も心で感じた事を一番大切にして生きている方。以前一緒に映画を作った時からずっと変わらない。上野さんがやれば凄く説得力が出るなと思った。あと、Xかもしれない役なので、ミステリアスな部分も必要じゃないですか。上野さんはそういう所にもハマりますし、日常の細やかな事を演じさせれば凄くリアルに、本当にコンビニで働いている人みたいに出来る女優さんなので。それで上野さん以外あり得ないと思いオファーしたという所ですね。

――上野さんと作品を作る上での話し合いはどのくらいあったのでしょうか。

熊澤:脚本の第二稿を渡して出演をお願いしたら、上野さんからすぐ電話があって、凄く熱量があったんですよね。台本を読むと伝えたい想いが沢山生まれちゃって、こういうのを入れたらどうでしょうか、とか僕に伝えたくなってしまったそうで。自分もそうなるだろうなと思ったんですけど(笑)。でも彼女が変わったなと思うのは、凄く柔らかい女性になっていて、大人になった。それで良子ってキャラクターも柔らかい感じを出していこうと話し合いの中で決めました。

――林遣都さんのキャスティングについてはいかがでしょうか。

熊澤:林遣都は二枚目で美青年、そして演技に対して凄く真面目に考える人なんです。彼が15歳の時に初めて一緒にやりましたけど、その後沢山彼の出演作品を観てきて、林遣都がいかに真面目に取り組むかが業界内では噂になっていました。今回の笹という役は人間の駄目な部分、弱い部分を徹底的に描きたいと思ったんですが、林遣都だったら絶対出来るなと思いキャスティングしました。

――作品に登場する編集部には嶋田久作さん、バカリズムさんのような個性的な俳優さんも多数出演されていますが、現場ではどのような接し方をされていたのでしょうか。

熊澤:特に演技指導みたいな事はしていないのですが、お二人には凄く期待していて、きっとハマるだろうと。特に嶋田さんとは前もご一緒しているんですけど、心を許してくれていて、凄く楽しんでやってくれました。また、バカリズムさんは柔らかい温和な印象があると思うんですけど、あえてパワハラ的な役をやって頂く事で普段とは違う独自性が出るんじゃないかなと期待してやって貰いましたが、そんなに僕が言わなくてもむちゃくちゃ厳しい副編集長になっていました(笑)。それはバカリズムさんの才能ですよね。ある意味濃い出演陣になっていますが、誰がXなんだろうって目で観客が映画を見るので、個性的な方をキャスティングしました。

舞台挨拶コメント

熊澤尚人監督のコメント

林遣都くんが演じる笹がX探しをする所から話は始まりますけども、その中で生まれた偏見と皆さんはどう向き合うのか、映画を見終わった後、持ち帰って考えて貰えるんじゃないのかなと思ってこの映画を作りました。友達と、自分はこう思ったああ思ったとお話してくれると嬉しいと思っています。

林遣都さんのコメント

観れば観るほど色々な事を考えさせられる映画です。自分を愛してあげて、自分らしくいる方が良い事が沢山あると思います。そういう姿が見られる登場人物達だと思います。そんな事を考えながら観てくださったら嬉しいなと思います。

上野樹里さんのコメント

この良子さんは本当にヒロインなのって感じがするようなキャラクターなんですけど、でも、笹が良子を追っていく内に彼の心に変化が現れる。皆さんも、笹憲太郎さんと共に良子という女性を追っていきながら、自分の心の偏見というフィルターの変化を体感して楽しんで頂きたいです。

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『隣人X -疑惑の彼女-』

2023年12月1日(金)よりミッドランドスクエアシネマ他にて公開

原作:パリュスあや子「隣人X」(講談社文庫)
監督・脚本・編集:熊澤尚人
主題歌:chilldspot「キラーワード」(PONY CANYON / RECA Records)
音楽:成田 旬
出演:上野樹里、林 遣都、黃姵嘉、野村周平、川瀬陽太/嶋田久作/原日出子、バカリズム、酒向 芳

詳細はこちら
https://happinet-phantom.com/rinjinX/