なごや芝居の広場『ゼロの焦点』

なごや芝居の広場『ゼロの焦点』の稽古場にお邪魔させて頂きました。

公演も近くなってきているということもあり、良い意味で緊張感のある稽古場の様子を見ることが出来ました。

演出の木村繁さんらしいモノを使った演出は健在で、舞台化が珍しい松本清張の作品にも相性が非常に良いのではないかと感じました。また、ベテランから若手まで揃えた実力派の俳優達の演技にも注目です。

サスペンスでハラハラしながらその時代の空気にも触れられる、そんな作品が観られそうです。

●いのこ福代さん(制作)の話

――『ゼロの焦点』を今公演に選ばれた理由を教えてください。

いのこ福代さん(以下いのこ):個人的に松本清張が好きということと、テレビのサスペンスドラマって自分も参加しながらハラハラドキドキして見るでしょ。推理していくのってつい積極的になるんです。
それと松本清張が舞台劇になるって珍しいんです。だから最初は短編の同じ作品を男女がそれぞれの会場によって読み分けるという案だったんですけど、それを演出の木村繁さんに提案したら「いのこさん、ゼロの焦点なら劇化出来る」って逆提案があったんです。でもよく考えてみたら『点と線』とは違い、今作は人の心理を追っていくというのと、鵜原禎子という女性を中心にドラマが組み立てられるのでいけるんじゃないかと。ただ群読についてはひとつの手法として是非やって欲しいと木村さんにお願いしました。それで背景、通常だと映像にする部分を群読者が。例えば雪がチラチラとか、そういう情景を音にしています。それは凄く演劇的だなと思います。
あと作中で禎子の心理について天野鎮雄さんが語っていたと思いますが、男性が喋るだけで批評的になり、その距離感がとても新鮮なんです。また、松本清張自身も女性から見た男性の姿という視点で作っているのが面白いと思いました。現在であれば不思議ではないのですが、当時そのような視点で男性を見るというのは珍しかったので。加えて作中に女中達が出てくるんですけど、戦後の復興の中でそういう立場の人が沢山いたんじゃないかって。先程の天野さんの語りとは別で同性としてどのように存在するのかなというがわたし自身も楽しみです。

――前回公演『暮しの詩』でも似たような視点があったと思います。もしかするとなごや芝居の広場の根底にはそういうこだわりがあるのかもしれませんね。

いのこ:でもそれは結果なんですよ。自分でも不思議なんです。自分が面白いって思うものがどこか現代に通じるものだったりリンクするものなんじゃないかなと思います。

――演出を木村繁さんにお願いされたのは何か理由があるのでしょうか。

いのこ:白石加代子さんの朗読を演出されたのを観に行ったんですよ。それが凄く良くって。また、人形劇なんかも演出されていますが、距離感があるんですね、ものの考え方というか。ちょっと引いて見せるというか、そういう演出スタイルを持った方かなと思います。少し突き放す感覚。そこに惹かれるのかもしれません。

――最後に見所を教えてください。

いのこ:サックスの生演奏があるんです。良い意味で贅沢感があります。ピアノとは違い息が入るので、その息遣いがいいですね。それと今回美術(大道具・小道具)が全部モノクロなんですよ。動くパネルも影絵みたいになっていて、視覚的にも不思議な世界。それそのものがミステリーというか。ストーリーを知っている人でも楽しめると思います。

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なごや芝居の広場『ゼロの焦点』

原作:松本清張
脚本・演出:木村繁
会場:昭和文化小劇場、守山文化小劇場、瑞穂文化小劇場、中村文化小劇場、南文化小劇場
昭和文化小劇場:2019年1月23日(水)~24日(木)
守山文化小劇場:2019年1月30日(水)
瑞穂文化小劇場:2019年2月1日(金)~2日(土)
中村文化小劇場:2019年5月16日(木)~17日(金)
南文化小劇場:2019年5月22日(水)~23日(木)
問い合わせ:070-5037-0320(制作担当:いのこ福代)、052-249-9387(名古屋市文化振興事業団チケットガイド)