俳優館のシェイクスピア・リーディング・シアター『ペリクリーズ』と『お気に召すまま』の稽古場にお邪魔させて頂きました。
今回はふたつのリーディング作品の同時取材ということで、二人の演出家に話を伺うことが出来ました。
それぞれ独自の演出で作品作りを進めておられますが、お二人のリーディングに対する考え方には共通点が多い点に非常に興味を惹かれました。
そして今回の2作品は共に「楽しい作品」ということです。これまでのリーディング・シアターとは一風変わった2作品が見られそうです。
●木村繁さん(『ペリクリーズ』台本・演出)の話
――『ペリクリーズ』を上演作品に選んだ理由を教えてください。
木村繁さん(以下木村):リーディング・シアターで演出するのは3本目なんです。『ジュリアス・シーザー』、『マクベス』と、政治劇や社会劇、歴史劇的なものをやってきたので、今度は晩年の全然違う系列の作品をやってみたいなと。リーディングに合いそうで、毛色の違うもの。
――今作を演出する上で、意識されている所はありますか。
木村:リーディングというよりも小説を朗読するような感じですね。リーディングに合う作品とそうでないものがあるんですけど、シェイクスピアは台詞が長いので。台詞は長くなればなるほど飾ったものになる。そういう意味ではリーディングに向いていますね。
――今作の見所を教えてください。
木村:今回は奇想天外な放浪の旅。死んだ人が蘇ったり、神様が出てきたり。本当に同じシェークスピアが書いたのかと思えるような娯楽性の高い作品です。
●なかとしおさん(『お気に召すまま』台本・演出)の話
――『お気に召すまま』を上演作品に選んだ理由を教えてください。
なかとしおさん(以下なか):これまでふたつのリーディング・シアターの作品に出演したんですけど、今度は毛色の違うものをやりたいなと。権力絡みの重たい芝居では無くて、楽しい系のものをやってみようかと。
――リーディング作品を演出する上で、普段と変えている所はありますか。
なか:普通のお芝居だったら役を身体全体で表現していく。でも台本を持ってのリーディングなので、その制約の中、声中心でどこまで表現出来るのか。ラジオドラマみたいに台詞だけを追っていけば理解出来る台本もありますが、今回のものはどうもそうじゃなさそうなんですよ。もちろん台詞を中心にやっていくんですけど、それを受け取る役者とのコミュニケーションをどこまで作れるのかが楽しみであり、課題でもあります。その上で普通のお芝居よりも分かりやすく伝わって、面白かったと思って貰えれば一番いいです。
――今作の見所を教えてください。
なか:4組の若者たちの恋愛模様があるんですね。それがすっと成就する組もあるし、三角関係になったりとか、恋人になるまでを楽しんだりとか、その辺の若者の恋愛物語を楽しんで頂ければと思います。スマホやら道具の違いはありますが、恋の駆け引きは常に同じですね。
●小林正和さん(『ペリクリーズ』出演)の話
――俳優として、リーディングを演じる上で意識されている部分はありますか。
小林正和さん(以下小林):10年くらい前に関西で一度やったきりなので、まだ分からない(笑)。客観的に観ている分には、役者は台詞が入ってくると本を離したいんだろうなと思います。だからぼくもそうなるのかな。台本を見ていると視覚から入るので、左脳を使う訳じゃないですか。でも本を離すと右脳にそれを転換する。感覚に。そして距離感とか感情が動いてくる。なので、本を持ちながら右脳に動かすという微妙な感覚が分かるのかなという感じですね。
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俳優館 シェイクスピア・リーディング・シアター
『ペリクリーズ』
台本・演出:木村繁
会場:俳優館スタジオ
日時:2016年5月19日(木)~22日(日)
出演:小林正和、小熊ヒデジ(てんぷくプロ)、久川德明(劇団翔航群)、ヤストミフルタ(ノックノックス/ユニークポイント)、稲垣僚祐、伊藤天馬(代々木アニメーション学院名古屋校)、いのこ福代、ジル豆田(てんぷくプロ)、後藤好子(俳優館)、谷口真規(俳優館)、平本秋穂(俳優館)
『お気に召すまま』
台本・演出:なかとしお
作曲・バイオリン演奏:渋川卓思
会場:俳優館スタジオ
日時:2016年6月2日(木)~5日(日)
出演:稲吉直人(俳優館)、林正弘、河合将弘、西岡昇、youu-ji、城取樹、村井大起(名城大学劇団獅子)、みやちともこ(俳優館)、武藤陽子(劇団名芸)、丸林みい(俳優館)、志村友美(俳優館)
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