映画『佐藤さんと佐藤さん』舞台挨拶リポート

11月28日公開の映画『佐藤さんと佐藤さん』の主演、岸井ゆきのさんと宮沢氷魚さん、そして天野千尋監督が登壇した名古屋での舞台挨拶の模様を取材させて頂きました。

本作は、活発な性格の佐藤サチと真面目な佐藤タモツが結婚し、司法試験に失敗したタモツを応援する為に、一緒に受験をしたらサチが先に受かってしまったという所から始まる、2人の15年間を描いた物語です。

チケットが即日完売となり多くの人が詰め掛けた会場で、登壇された皆さんは撮影以外の所でも気が合うのが感じられ、笑いを交えながら、終始和やかな雰囲気でトークは進みました。

舞台挨拶リポート

――オファーがあり、最初に脚本を読まれた時はどのように感じられたでしょうか。

岸井ゆきのさん(以下岸井):わたしは実生活で夫婦生活を体験していないので、初めて脚本を読んだ時は、この佐藤さんと佐藤さんはよく喧嘩をするのですが、そのきっかけが些細な事だったりして、「そんなに喧嘩するんだ」とか、結構ドラマチックに思えました。他の人と生きるってこういう事なんだっていう風に思って。一刻も早くこの世界に入ってみたいなと思いました。

宮沢氷魚さん(以下宮沢):この脚本を読んでいる時に、描かれていない年月だったり、物語のあとの15年、20年はどうだったんだろうととても興味が湧いたんです。描かれている世界だけじゃなくて、想像力の中での世界がどういう風に描かれていくのかというのが僕の中では判断基準というか、それをベースに作品を選んでいるんですけど、この2人はどうなるんだろうと凄く興味津々になりました。この佐藤タモツという人間を1分でも長く生きたいって想いが、読んだ時からありました。

――お二人は初共演ということですが、最初に会った時の印象はいかがでしたか。

岸井:凄く穏やかで優しくて、本当に初めましてみたいな緊張感がゼロ(笑)。すぐに雑談をできるというか。それは監督も同じだったんですけど。不思議な感覚でしたね。

宮沢:いつもは「どういう人なんだろう」とこっちも緊張して入ってしまうんですけど、共通の知り合いからお話も聞いていて、実際に会ってみたらそれ以上に素晴らしくて優しい方だったんで、作品に入るのが楽しみで仕方なかったです。また、いざ作品に入った時も、役に対するプロフェッショナルで真摯な姿というのは、僕や監督だけじゃなくて、現場のスタッフ皆が感じていたと思います。

天野千尋監督(以下天野):最初に1週間くらいリハーサルがあったんですけど、雑談だけで過ごすみたいな時間もあり、そこでお二人が持つ空気を掴む事ができて、脚本のサチとタモツと、2人が持つものを嵌める時間を持てたなと思います。その後ご飯食べに行ったり、コーヒー行ったりして仲良くなって、安心して現場に入れる感覚がいいなと思いました。

――これまでは原作があって、そこから映画化する作品も多かったと思いますが、今回は完全オリジナルということで、本作を作るきっかけは何かありましたでしょうか。

天野:わたし自身が出産してから、パートナーとの間で喧嘩がめっちゃ増えたんですね。家事、育児、仕事とあって、その中で育児をワンオペで引き受けたんですけど、タモツのように閉塞感のある、社会から取り残されたような状態を経験して、外で自由に働いている夫に対して恨めしい気持ちがあり、ストレスを夫にぶつけてしまう事もあったんです。そこから映画の仕事に復帰して、今度は逆に家事育児を夫に任せる日も出てきたんですよね。それで夜遅く帰ると、夫が恨めしそうな目でわたしを見ている状況がありまして。それって男女とか性差ではなくて、立場によって感じる事は違うし、その立場にならないと見えない所があるなと実感しました。そこからサチとタモツのキャラクターが生まれました。

――サチとタモツを、岸井さん、宮沢さんにお願いしようと思ったのはどうしてでしょうか。

天野:サチはバイタリティがあって芯の強いイメージがあったので、岸井さんにお願いしたいと思っていたんですけど、実際にオファーしてサチをやって頂いたら、想像以上にサチでした。タモツに関しては、これまで宮沢さんはクールな役を演じられる事が多いと思ってたんですけど、実はちょっと情けなくて弱い部分を晒すような役を演じて貰ったら面白いかもと思っていました。そして実際に演じて貰ったら、宮沢さんは誠実で見た目もクールなのに、めっちゃ情けないというのが面白くて。現場でも応援したくなるんですね。

宮沢:僕、多分普段はタモツに似てると思うんです。結構不器用で空回りするんで。演じながら似てるなと思う所もありました。

――ご自身で本作をご覧になってどのように感じましたか。

宮沢:共感できるポイントが沢山あるんです。タモツの気持ち分かるぞ、という所もあれば、サチの気持ちも分かるという場面もあります。そしてパートナーや友達、家族と一緒に居る関係って、みんな違うんだよなって気付きました。自分を見つめ直すきっかけになった作品ですね。それぞれの正解というか、幸せを見つける為に、自分たちの形を是非見つけて欲しいなと思いました。

岸井:作品を改めて観ると、こんなに痛い瞬間があるんだというか。タモツに申し訳ない気持ちになったし、演じている時はサチの正義があるので最善を尽くしていたんですけど、客観的に見ると、お互いの気持ちがこんなに擦り減っていく事があるんだって俯瞰的に受け入れられて、ようやく自分を見るというか。この作品は誰もがどこかに自分を映すようなシーンがあると思っていて、自分を見つめ直してみようと思える映画になったのが嬉しいです。

――最後に一言づつお願いします。

宮沢:みんな感じ方は違うと思いますが、是非、友達や家族と観終わった後に議論というか、「どう思った?」とか、内に秘めているものを曝け出せるような体験をして頂けると嬉しいです。

岸井:誰かと話したくなる映画になったと思うんです。本当に沢山の人が色々感じる映画になったと思うので、是非応援してくれると嬉しいです。

天野:素敵な俳優、スタッフと作ったこの作品を観て頂けるのが本当に嬉しいです。是非楽しんでください。

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『佐藤さんと佐藤さん』

11月28日(金) 全国ロードショー

岸井ゆきの 宮沢氷⿂
藤原さくら 三浦獠太 ⽥村健太郎 前原 滉 ⼭本浩司 ⼋⽊亜希⼦ 中島 歩
佐々⽊希 ⽥島令⼦ ベンガル
監督:天野千尋
脚本:熊⾕まどか 天野千尋 ⾳楽:Ryu Matsuyama Koki Moriyama(odol)
主題歌:優河「あわい」(ポニーキャニオン)
配給:ポニーキャニオン 製作プロダクション:ダブ
2025 年/⽇本/カラー/アメリカンビスタ/DCP/5.1ch/114 分
(C)2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会
映画公式 HP:https://www.sato-sato.com/