投稿者「名古屋演劇アーカイブ」のアーカイブ

里見有祐 さん

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里見有祐と申します。森さんからバトンを引き継いだものの、ずいぶんと持ちっぱなしとしてしまいました。長谷川さん、みなさま、大変失礼いたしました。

横浜で企画・制作や創造環境への取り組みに携わっています。ルーツとして学生時代から現在まで活動しているのが「ペピン結構設計」という劇団での制作です。1999年から活動を始め、最初はSTスポットやBankARTをはじめ横浜で公演を重ねていました。ここ数年は、そうした上演スペースよりも地域や場所に赴き、立ち上げる/立ち上がる作品制作をしています。最近だと香川県高松市で制作した演劇まちあるき「パラダイス仏生山」(2015年9月)があります。

こうした劇団活動と並行しながら、以前はフェスティバル/トーキョーの前身であった東京国際芸術祭の制作や、稽古場施設・急な坂スタジオの立ち上げなどに従事していました。現在は、横浜市芸術文化振興財団に所属し、ダンス事業や施設運営、助成事業などに携わっています。振り返れば、横浜という地域との関わりから現在の活動があるとあらためて実感させられます。

98年にNPO法が施行され、2000年代初頭には各地でアートNPOが立ち上がり、横浜では政策として「創造都市」が謳われはじめた頃でした。大小様々なレベルで官民が交じり合い文化芸術の可能性について取り組み始めた流れと、私の経験や視点は少なからず重なる部分があります。

森さんとの出会いはすでに前回でお書きいただいた通りですが、経験のある先輩制作者として刺激をいただくことはもちろん、自分にとって初めて出会う離れた地域の制作者ということで、自分の活動する横浜をあらためて「地域」として捉えるきっかけになった出会いなのかもしれません。

あらためて演劇づくりを地域や場所から立ち上げることを意識したのは、森さんがプロデュースされる劇団・三角フラスコさんとペピンによる合同公演「ハウ・アー・ユー?」でした。2011年に色々とあったなかで、東北・関東を行き来しながら作品を通じて対話したこと。「何のために、誰のために作るか」といった自分たちのスタンスにひとつギアが入った貴重な経験でした。

それ以降、ペピンとしては色々なご縁の中で北九州のアーケード撤去が予定された商店街でのアートイベントや、横浜のスナックのある街でのアートイベント、そして今も進行中で今年3年目になる高松での演劇まちあるき「パラダイス仏生山」などと、関わり方は様々に、地域の方々との協働による作品づくりをしています。

もちろん決して、劇場に興味がないわけではなく、演劇的な体験やパフォーミングアーツの可能性が劇場の外にもあることを模索し、それを試行している現状です。またそれは、逆説的に劇場の可能性や有り様について考えているものとも思いながら。

「さいきん気になっているカンパニーとか作家、おしえて」

ここで森さんからいただいた質問について。自分の関心としては地域や場所・プロジェクト、またそれらを先導する方にここ最近の興味があったので、瀬戸内国際芸術祭や各地で活動される劇団ままごとさんや指輪ホテルさん、北澤潤さん、Nadegata Instant Partyさん、まだ拝見できておらず恐縮なんですが家プロジェクトと謳い活動される贅沢貧乏さんなど、作品の中に固有の物語や身体、地域性・場所性といった文脈を感じる活動に感化されることが多いです。もしお話を伺う機会があったら、きっと話題に困らなさそうです。

劇場外での活動は、天候や地域の日常、また突発的なアクシデントなど、よくもわるくも現場の環境要因が上演作品の一回性に強く作用する場合があります。そのため、結果として参加者に強い体験が残らないかぎり、芸術として流れてしまいかねないリスクもある。だから、それでも劇場を飛び出るにはそれなりの理由がないと必然性に欠けかねなくもあり、今の自分にとって「会いたい/見せたい人や記憶・風景」というものは理由のひとつと言えるのかもしれません。それは前述した「何のために、誰のために作るか」というシンプルでざっくりともした動機に直結しています。

たとえば、「10年前、5年前と劇場や舞台芸術を取り巻く環境が変化した」と仮定して、演劇的・劇場的体験の在りようは、現在どのようにあるのか。もちろん答えはひとつと限りませんが、そうした問いとともに今後も作品制作や創造環境整備を通じて取り組んでいきたいと思っています。森さんとはいつも適当なことばかりしか話さないので、たまにはそうした話もいいかもしれないですね。なんて。

そして、このバトンを次につなぎたい人。目下、ペピンで制作を重ねるパラダイス仏生山の現場で並々ならぬご尽力をいただいている香川の制作者さん、植田良子さんにバトンをお渡しできたらです。

「シアターデザインカンパニー」という制作者チームを率いて地域での演劇活動を耕されています。ちょうど2014年11月に仏生山町のイベントの中でささやかに試行した「習作・パラダイス仏生山」を観ていただいてから、ご縁が生まれて現在に至ります。2015年のパラダイス仏生山では、私自身の滞在日数も充分に確保しづらい制作環境にある中で、地元マスコミ各社をはじめとした様々なお声がけや、当日運営をチーム全体で支えていただくなど、欠くに欠かせぬ存在でした。

2014年にシアターデザインカンパニーの活動を開始された以降も、瀬戸内国際芸術祭や四国学院大学をはじめ香川をとりまくパフォーミングアーツの機会は、多様な形があるよう見受けられます。劇場はもちろん島やカフェスペース、農村舞台など大小様々に素敵な空間をみるとわくわくしますし、そうした土壌で活動されるシアターデザインカンパニーさんの今後もたのしみにしています。

そこで質問です、「2015年、一番印象的だった作品はなんでしょうか?」。これに加えて、もしあれば「香川でいま気に入っているご飯屋さんをひとつ挙げるとしたら教えてください(うどんを除く)」という2つで聞けましたら。(2つ目の質問は、次の高松滞在にて確実に活用すると思います!)

2016年も11月のパラダイス仏生山にかけて、またお世話になります。引き続き、よろしくおねがいいたします。それでは、このあたりで。

追伸:
ちなみに、私の最近一番印象的だった作品は、2015年のアヴィニョン演劇祭で観たWINTER FAMILYというカンパニーによる「NO WORLD / FPLL」という演劇でした。