新田幸生 さん

みなさんこんにちは。吉田さんよりご紹介にあずかりました新田と申します。インディペンデント・プロデューサーとして、この数年間はアジアでの共同制作や国際交流を中心に活動し、TPAM – 国際舞台芸術ミーティング in 横浜でExchangeプログラムを担当しています。私は東京で生まれましたが、中学校卒業前に台南に移住し、大学院卒業までずっと台湾で生活していました。大学のダンスサークルでは、初めてパフォーマンスに出会いました。そして、数年間のストリートダンス活動の中で、私は自ら演じることよりも、パフォーマンスをプロデュースした達成感こそが自分の求めているものであることに気付きました。そのため、大学の専攻は歴史でしたが、大学院ではアートマネージメントを学ぶ道を選択しました。

劇場の仕事と関わるまで、私はダンス活動を続けながら日系のデパートで三年間働いていました。そして、台北の大学院に通い始めた後、初めて劇団での仕事に就き、こども演劇のマーケティングを担当しました。当時の作品の最後の一幕に、天井からカラフルなボールがいっぱい落ちてくる場面があります。毎回、舞台裏でその場面の子供たちの表情をこっそり見ているうちに、演劇に魅力を感じるようになりました。今でも仕事がうまく行かない時は、そのカラフルなボールと子供たちの歓声を思い出しています。

インディペンデント・プロデューサーとして幸せな面もあれば、辛い面もあります。柴幸男、第七劇場、Shakespeare’s Wild Sisters Group(莎士比亞的妹妹們的劇團)、Huang Yi Studio +(黃翊工作室) Anpu(安溥)などの好きなアーティストを自由に選択してコラボレーションできる点は、非常に幸せな事だと思います。しかし、どの組織にも属していないために資金や場所の手配が困難で、一つの作品を完成させるためは長期的な計画を立て、様々なリソースを準備していかなければならない苦労もあります。

私は台湾人と日本人のハーフなので、この数年は台湾と日本を往来しています。最近は国際共同制作を中心に活動し、様々な国のアーティストに声をかけてコラボレーションの仕事を行っています。仕事の面では苦労する事も増えましたが、この全国制作者ブログリレのサイトのように、見知らぬ人々が集まって徐々にお互いを理解し信頼し合うことで、人と人との繋がりの大切さを学ぶことができました。

プロデューサーはアーティストではありませんので、作品を制作する過程で口を出さないようにしています。この十数年間の経験でプロデューサーの仕事は、多くの人が関わる仕事に働きやすい環境と現場に良い雰囲気をプロデュースすることだと学びました。また、人間関係は人生の中で最も難しいものであることも学びました。一つの作品が何年もかけて発展し、成熟していく中で、プロデューサーは他人の人生に影響を与える仕事だと言えます。このことを忘れないように心掛け、慎重に判断し、他人の気持ちを汲み取り、他人に配慮できる人間になりたいと考えています。

吉田さんの質問への回答ですが、国際共同制作において最も重要なのはバランスだと思います。ここで言うバランスとはアーティストの視点からのバランスであり、お互いが持つ背景に対する理解度や相手の考え理解しようとする意欲のバランスでもあります。良い作品をつくるには時間がかかりますが、国際共同制作ではより多くの時間が必要となります。アーティストがどれだけ作品に時間をかけるかで作品の精度と完成度も変わってきます。お勧めの台湾の観光スポットと言えば、美食の町「台南」以外に選択肢はありません。(ぜひ牛肉スープとサバヒイ粥を食べてみてください。)

私の話は以上です。ここからは清水さんにバトンタッチしたいと思います。清水さんは元々維新派のメンバーです。彼は謹厳実直な仕事ぶりで、劇団では奇抜で大掛かりなパフォーマンスもこなしています。また、清水さんは物事の良し悪しを判断できるまじめな人で、これまでずっと尊敬してきたプロデューサーです。その清水さんには、一人のアーティストと長期に仕事をするプロデューサーは、どのようなキャリアプランを立てればよいかをお聞きしたいと思います。