投稿者「名古屋演劇アーカイブ」のアーカイブ

村松里実 さん


Photo: Norihito Hiraide

こんにちは、はじめまして、村松里実と申します。
このような機会をくださりありがとうございます。
紹介してくれた竹宮華美さんも、ありがとうございます。

(実は、恐縮と緊張でひや汗をかいています。が、)
精一杯ていねいにことばを捻り出せればと思って、パソコンに向かっています。

まず、わたしは何者なのか、というところから。
舞台芸術の企画・制作をしています。
昨年の夏まで愛知県芸術劇場に勤めていました。現在はあいちトリエンナーレ2019にコーディネーターとして関わらせていただいています。

そもそも文化や芸術というものに関わることになったのは、高校生の頃に映画に興味を持ってしまってからのようです。
いや正確には、自分にとって「鑑賞するもの」であった映画の画面のその向こうに「作り手の存在」「届ける存在」「場を作る存在」があるということに気づいたから、だと思います。

それはたしか高校1年の体育大会の日でした。抜けるような青空の下、(だったかは覚えていませんが)高校のOBである七里圭さんという映画監督が、母校訪問にみえまして。
当時映画研究部に所属していたわたしに、七里監督の映画が上映されるシネマテークのチケットをくださった。

それまでいわゆるシネコンでしか映画を見たことがなかった自分には、その名古屋シネマテークがまず衝撃で。あやしげなビル(すみません)の奥で。
暗転の瞬間の電球のフェードアウトが妙に最高で、頭がくらくら痺れた。
その時見たのは「のんきな姉さん」。
こんな映画があるんだ、こんな世界があるんだ、という驚き。作り手との繋がりができた瞬間でもありました。

こっち側とあっち側は地続きだったのだ…、と。

そこでまんまとあっち側へ向かって、手探りで進んでいくことになりました。
幾度かの選択の結果、劇場へ。
舞台芸術のまわりにやってきました。

――
さてここで、ここは「全国制作者ブログリレー」ということですが。ということですので。
制作という言葉について。

わたしは大学時代、芸大ではないけれど芸術系の大学で作品を作ったりしていました。
そこでは自分の作品を作ることがイコール「制作」でした。

—という意味での「制作」しか知らなかったので、仕事として舞台の「制作」をスタートするときは、その言葉に戸惑いがありました。

今でも、「制作」とはどういう仕事か説明しろ、と言われても簡潔に言い表すことはできなくて、
現場の数だけ、制作者の数だけ、「制作」業務があるということがわかった、くらい。

何年かバタバタしながら制作として現場に入らせていただいて思ったのは、制作とは、皆で歩く道の前をトンボでならしていくようなことなのかなあと。そう考えるようになりました。
舞台作品が作り出され、稽古をして、本番を迎え、事後処理が終わるまで、それが全て円滑に、怪我なく安全に、さらにはみんなが気持ちよく、それによってより良い作品が生まれるように。

まだまだ未熟者で、ガタガタ道を歩かせてしまったり、遠回りさせてしまったり、ということも何度もありました。(今でも…。)

自分も歩けないくらいの悪路となってしまった時に、支えて一緒に歩いてくれる人たちに出会えたから、今もこうしてもがき続けることができているのだと思います。

――
さて、竹宮さんからいただいた質問「ジャンルが違うアーティストを繋げるときのコツ」
(ってそれは私もぜひ知りたい!ってやつですが…)

コツになっているかどうかわかりませんが、ジャンルが違うアーティストが参加する公演に関わるということを想像しつつ、自分がどうするか考えてみました。

1つは、自分がそれぞれのアーティストのことを深く理解すること、
もう1つは、互いが素直に意見を言い合える環境を作るということだと思います。

当たり前のことですが、わたしたちはそれぞれ別の価値観をもった別の人間なので、1つの地点に着地するためにはどこかで折り合いをつけることになると思います。
なので、まず、自分がそれぞれのアーティストを深く理解して、信じること。
(自分がきちんと理解できていたら、他の人に説明できるし、折り合いのつけどころもきっと見当がつくはず…。)
そして、みんなが信頼関係を築く足がかりになれたらいいなと思います。
それぞれが「この人とだったらきっといける」って思うことができて、素直な意見を言い合える雰囲気にできたら、良いクリエーションができるような気がします。

そのためにも、日頃から視野を広く持っていたいと思います。
日々、目の前のことにいっぱいになっていると、それが世界だと思い込んでしまいがちなので…自省も込めて…!

――
さて、次の走者へブログリレーのバトンを
城之崎アートセンターの吉田さんにお願いしたいと思います。
いま、滞在制作の在り方に興味があって、現場に一番近いところで活動されている吉田さんにお話聞けたらと思います。
質問は…吉田さんの活動の内容と、今考えていること、など。なんでも。
よろしくお願いいたします。