小室明子 さん

こんにちは。札幌で演劇制作をしています小室明子と申します。

せっかく笠原さんがプロデュース公演の宣伝になれば、とバトンを渡してくださったのに公演も終わって1ヶ月近くが経ってしまいました。すみません。笠原さんからご質問の「新しく団体を立ち上げられて、今後どのような活動をしていきたいと思ってますか」というのが自己紹介代わりにもちょうどよいかと思いますので、そこへ至るまでのことなどから。

この春、「ラボチ」という名前の演劇制作カンパニーを立ち上げました。
昨年3月に、それまで7年ほど勤めた劇場を退職しました。精神的に相当追い詰められておりまして、もう札幌で演劇の仕事を続けることは無理だろうと鬱々とした日々が続いていましたが、ちょうど1年くらい前、柴田智之という俳優の一人芝居「寿」の制作として誘われ、札幌と弘前で公演をしました。この柴田という俳優は本当に作品に対してひたすらにまっすぐな男でして、その仲間たちも「寿」をただただ良い作品にするために集まっているような人たちで。この先いろんな土地で公演をしていきたいということで私が制作として呼ばれたわけですが、良い作品を創ってたくさんの人に見せたい、という純粋な環境に身を置けたことで、精神的なリハビリになったといいますか、作品の力もあって演劇の魅力を改めて思う機会となりました。初めて訪ねた弘前という町の清々しい空気と公演をしたスペースデネガの素敵さも相まって、気持ちが少し前向きになりました。

そんなこんなで、制作として必要としてくれる団体があるのであれば、と徐々に息を吹き返し、そして、続けるからにはきちんと法人化もしよう、と現在に至ります。気持ち的には新人制作者です。まだできてませんけど法人化は自分を鼓舞するためというか、腹をくくるために必要だと思ってのことです。別に仕事をもって好きな作品の制作に関わるというやり方もあったと思いますが、私の人生も残り20年くらいだろうと考えた時に、ただただ生活するお金を稼ぐために興味のない仕事に1日の大半を費やし続けるのは嫌だ、という思いがよぎりました。それならばいっそ、演劇制作を生業にできる環境を作って下の世代に渡す、ということに残りの人生を費やしてみようかと、今はそんなことを思っています。同時に、大袈裟ではありますが札幌演劇の産業化も目指し、「質の高い演劇作品を創り届ける」という基本的なことのために必要なあれこれを、繰り出していきたいと考えております。

先月、ラボチという名義で初となるプロデュース公演を終えました。笠原さんが制作をされているiakuの横山拓也さん作・演出により、第1回せんだい短編戯曲賞を受賞した「人の気も知らないで」を札幌の女優の出演により上演しました。脚本の面白さと演出の確かさ、そしてキャスティングもうまいことはまり、大変に良い作品になりました。今後、作品にとって良い形で再演できる機会を探っていきたいと思っています。
先週は制作を請け負っている劇団、弦巻楽団の公演で韓国へ行ってきました。公益財団法人北海道文化財団の推薦を受け、光州平和演劇祭へ参加したものです。個人的には初の海外公演で、仕込みから本番まで、なかなかのカルチャーショックの連続でありました。しかし、字幕を通した公演でのお客様の反応、現地の演劇人たちとの熱い交流、作品も劇団も良い意味で図太くなっていくんだろうな、という経験を得ることができました。「死にたいヤツら」という作品で参加したのですが、この作品はこの秋に北海道内3か所ツアーと韓国2都市公演が控えています。最後にはどうなっているのか、楽しみです。

と、こんな日々を過ごしつつ、現在は7月にある弦巻楽団の若手演出家コンクール2014最優秀賞受賞記念公演(http://tsurumaki-gakudan.com/?p=1706)と、先に挙げた柴田と舞踊家・東海林靖志のユニット・鳥坊主の3カ所公演(https://note.mu/toribouz/n/nf583405fab5f)の準備を進めています。それから秋の各種公演へ向けた諸々を。おかげさまで、楽しく忙しく制作の仕事をしております。ありがたいものです。

会社の名前である「ラボチ」はロシア語で「労働者」を意味します。音の響きで決めましたが、働く人たちにこそ気軽に演劇を楽しんでほしい、という思いと、札幌で演劇が産業化するために死ぬほど働きます、という意味をこじつけています。これからどうなっていくのかわかりませんが、倒れない程度に頑張っていこうと思っております。

だらだらと書き綴りましたがそろそろ次の方へバトンをお渡ししたいと思います。同じ北日本地域で活躍されております、仙台のtripod・森忠治さんです。三角フラスコのプロデューサーであり、せんだい短編戯曲賞のディレクターなど幅広く活動していらっしゃいます。地域プロデューサーを務めてらっしゃるINDEPENDENT:SDNでは一昨年、今年と札幌の団体を招聘していただいてありがとうございます。森さんへの質問は、「最近制作として興味を持っているのはどんな仕事ですか?」です。あと個人的に「集中力が持続する秘訣があれば教えてください」。

ではでは、よろしくお願いしますー!