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廃墟文藝部『MOON』

廃墟文藝部『MOON』の稽古場にお邪魔させて頂きました。

稽古場に到着した時には通し稽古終盤で非常に緊張感がありましたが、それが終わると、この日は作演出である後藤章大さんの誕生日だったらしく、サプライズパーティーが行われ、一転して和やかな雰囲気に包まれまれるという貴重な光景が見られた稽古場でした。

今回のお芝居はミソゲキ2013からは一転し、会話劇を展開するようです。後藤さんは普段通りの大人しい空気は持ちつつも、時折鋭い視線で細やかな演出を付けていました。

既に色々な活動を展開しておりますが、実は今回が初回公演の廃墟文藝部。かなり気合いを入れて臨んでいるようです。

●後藤章大さん(作・演出)、芝原啓成さん、棚橋愛さん(出演)の話

今回の台本を書こうと思われたきっかけを教えてください。

→後藤章大さん(以下後藤):だいぶ前の話になってしまうんですけど、以前『SKYROCKETS』というお芝居を打った際に評判が良かったので同じようなものを書こうと思い、先に小説を書いたんです。今回の話はその小説に出てくる作中作なんですが、それを読んだお友達から「面白いから上演してよ」と長いこと言われてきていて、それが形になった。

今回は作中で顔を見分けられないという人物を扱っていますが、それを考えついた経緯を教えてください。

→後藤:まずひとつ触れておきたいのが、このような障害は実際にあるのですが、かなり誇張して書いています。実際には作中のような症状は出ませんので、これを見てこんな症状があるんだと思わないで欲しいということです。ぼくは障害との戦いのような社会的なものではなく個人的なもの、結局のところ、片思いの話が書きたいと思っていました。片思いが辛いのは、自分が相手に出している気持ちと相手が自分に出している気持ちが違うということなんですよね。自分は好きなのに相手は友達として見ているとか。そこでまずは姉弟という設定、そこにプラスアルファとして、自分は相手が好きだけれど向こうは自分のことすら覚えていない設定を入れました。なので、障害を書きたいというよりは、心のすれ違いを書きたいんです。

それぞれ自分の所属を持つお二人ですが、後藤さんの演出の特徴などがあれば教えてください。

→芝原啓成さん(以下芝原):技術重視というよりは感情重視なのかな。

→棚橋愛さん(以下棚橋):奇をてらうというよりは正統派ですね。あとは手がよく動きます。口よりも手が動く(笑)。

今回の役をやるに当たり、気を付けていることがあれば教えてください。

→棚橋:芝居中、直感で判断しないようにしています。今回は表情が分からないという設定があるので、相手の言葉や表情じゃないものに反応する。そこの違和感が出ればいいなと思います。自分が今まで生きてきたものと反応の元が違うので、なかなか難しいですね。

→芝原:一番台詞と出番が多いので、ぼくが出ていても嫌だなと思われないようにしたいなと思います。

今回の演出で意識していること、やってみたいことがあれば教えてください。

→後藤:今回はワンアイデア芝居です。帽子で人間を見分ける人という、アイデアの面白さで勝負する芝居です。ただアイデアの面白さというのはお客さんの興味を5分から10分引くことしか出来ないと思っています。それが本当に面白くなるのは、そのワンアイデアと書きたいテーマ性が合致する時だと思っています。ミソゲキ2012でやった『24時』は1時間を1分で表現するというものですが、それを『1時間が1分に感じられるくらい慌ただしい人物の話』という形にすることでテーマと演出が結び付く。ネタバレになるので詳細は省きますが、人の顔を帽子でしか判別出来ない女の子と、思いのすれ違いという、アイデアとテーマ性の擦り合わせが見所だと思っています。また、演出も他の劇団では観られないものだと思います。演出的に格好良いからという理由だけで突飛な演出をやってしまうのは、お客さんの心に残らない。それよりはそれをやる理由がテーマに密接している方が効果が高いと思います。こういうアイデアだからこうなるんだろうねとお客さんが納得して頂けるように作っています。

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廃墟文藝部『MOON』

作・演出:後藤章大
会場:G/Pit
日時:2014年3月7日(金)~3月9日(日)
出演: 芝原啓成(妄烈キネマレコード)・棚橋愛(星の女子さん)・タケダジュンヤ(劇団バッカスの水族館)・宮出貴衣(虚構オメガ)・椎葉星亜(劇団んいい)・つらくも七瀬(フリー)・伊藤文乃(オレンヂスタ)

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