窓辺とリップス『消えた明日に代わって』の稽古場にお邪魔させて頂きました。
南山大学にお邪魔して稽古を見させて頂きました。
女性2人芝居を通して、代表の荒井さんが考える肉体的演劇からの離脱や、戯曲と作品との距離の置き方等、色々な視点をそこに感じることが出来るのではないでしょうか。
●荒井啓利さん(戯曲・演出)、大宮司星さん、松浦汐音さん(出演)の話
――『窓辺とリップス』がどのような団体なのか教えてください。
荒井啓利さん(以下荒井):窓辺とリップスは自分が代表として1人やっています。自分は戯曲とそれを上演することは別々の芸術だと考えていて、その2つをそれぞれに発信していこうと思い立ち上げました。戯曲は戯曲としてひとつの芸術として提出しつつ、上演はまた別の形で提出するという形です。
――団体名の由来を教えてください。
荒井:自分の原風景の中に『窓』というのが強くあって。窓を通して見える景色や風景。自分は岐阜の田舎に住んでいるんですけど、小さい頃から窓から見ていた田んぼとか山とか川とか、その原風景を作品にしたい。団体名にある『とリップス』というのは旅をする『トリップ』の意味合いもあって、『窓辺からトリップ』する。また、リップスは唇。窓から言葉を発する。自分がまず書けるのは戯曲なので、言葉から始めようということもあって、このような名前にしました。
――この本を書いた経緯を教えてください。
荒井:この本自体は自分の体験。去年くらいの体験を本にしました。隣の部屋から聞こえてくる音。隣に人がいることを知ってはっとする。そこから2人の女性が出会う話です。戯曲自体はHP上に公開しています。
――では先程の話にあるように、戯曲自体をひとつの作品としている訳ですね。
荒井:そうですね。
――演出面で意識されていることを教えてください。
荒井:自分の演劇の師に当たる人が肉体的な演劇、アングラがベースなんですけど、自分はそれを教わった。ただ自分が演劇をしていくとなった時に、なら自分は肉体的な演劇をしなくてもいいんじゃないかって思った。でも現代口語演劇でも肉体はある程度求められるし、完全に肉体から離脱は出来ないと考えることも出来る。そして色々考えた結果、肉体が物に制御されている状態であればそれは肉体的な演劇ではないのではないかというひとつの結論に達しまして。木枠とかで身体が固められてる状態はある意味肉体的な演劇とは離れているのではないか。今回は肉体的な演劇からの離脱を目指して演出を付けています。
――今作を演じる上で気を付けていることを教えてください。
松浦汐音さん:演出からはフラットな発話を心掛けるよう言われています。
大宮司星さん:なので、自分達の中でこれまで気にしていなかった所、自分の声がどう聞こえるかを結構考えるようになりました。
――作品の見所を教えてください。
荒井:戯曲を読むと分かるんですけど、最終的に俳優が自分を俳優ではないかと考えるようになるんです。そして戯曲は一回読めば終わるんですけど、上演に当たってぼくらはそれを何度も繰り返していくんです。だからこそその積み重ねを意識して、その厚みがお客様に届けばいいなと思います。
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窓辺とリップス『消えた明日に代わって』
戯曲・演出:荒井啓利
会場:ナンジャーレ
日時:2019年6月28日(金)~6月30日(日)
出演:大宮司星、松浦汐音