大川興業『イヤホン』

大川興業『イヤホン』の合同記者会見にお邪魔させて頂きました。

大川興業恒例の暗闇演劇ですが、今回はイヤホンを全員にお渡ししての作品になるとのことです。ガイドとしてではなく作品の一部としてイヤホンから音が流れてくる演出とのことで、どんな世界が見られる(聞こえる)のかとても楽しみです。

●大川豊さん(作・演出)の話

大川豊さん(以下大川):今回はお客さん全員にイヤホンをして頂くお芝居となります。これは前々からやりたいと考えていたんですが、イヤホンをするとお芝居を壊すんじゃないかとずっと思っていて。それで悩んで考えていた時に、電車に乗ったら全員イヤホンを付けていて。そのくらいイヤホンは結界を作れる。自分の座っている所をゲームセンターにしている、リビングルームにしている、書斎にしている、映画館にしている。また、これまで歌舞伎の音声ガイドや視覚障害者の為のUDCast、ブロードウェーミュージカルの日本語ガイドとかを試したんですけど、芝居を壊さないし、特に歌舞伎は無いと分からないくらい。意外と本人の認識が大事なんだなって。それでここはちょっと勝負を掛けようと思ってこのお芝居を始めました。
物語は劇場を占拠したテロリストの話なんですけど、舞台からは生音が聞こえ、イヤホンからは交渉人の声がずっと聞こえてきています。なのでイヤホンはサブ的なものではなく、今回はメインと言ってもいいくらいです。わたしはこれを『サウンドサスペンス』と呼んでいます。お客さんの中には思わず声を出しそうになった人もいたみたいです。「あんた間違ってる」とか(笑)。何故か後ろを向いてしまう人とか。集中力が凄いのを感じます。

――ストーリーはどのようにして作っているのでしょうか。

大川:色々な政治の現場に行くのですが、例えばドナルド・トランプの襲撃の現場にちょうど居合わせたことがありまして。何故か取り押さえる所に参加する状況になっていて。それがテレビで放映されて、「あれ総裁じゃね?」って。そういうことが多々あります。世の中が本当に演劇化しているなと思います。物語を作ろうと思って行ってる訳ではないんですけど、そういう体験がきっかけになって作りたいなって思います。

――今回新たな演出に挑戦されているとのことですが、演出の際に苦労された点はありますか。

大川:SEだとノイズを入れるだけでもうまくいかなかったりします。マジックテープの音も最初はSEにしようかなと思っていましたが、これも駄目で。音のレベルの問題じゃなくて、本物のノイズをうまくマイク越しに入れないといけない。イヤホンの音がとてもクリアで、役者もとても集中しているので「これ作った音でしょ」って。それで練習ストップしたりして。また、生音が聞こえないように、演技と音は別々に稽古しないといけなかったですね。なので経費が(笑)。でもやる価値はありました。

――今回も視覚障害者向けの割引をご用意されているのでしょうか。

大川:もちろん。盲導犬も一緒に観れるようにしています。東京大阪では一緒に観劇される方もおられました。また悲しいシーンになると一緒に首をもたげたりして。切ない顔になるんです。

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大川興業『イヤホン』

作・演出:大川豊
会場:愛知県芸術劇場小ホール
日時:2018年9月27日(木)〜28日(金)

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http://www.kurayami.info