濱見彰映 (はまみあきえ) NPO法人福井芸術・文化フォーラム事務局。大学在学 中より知的障がいの青少年を対象としたダンスワークショップや、障がいのある方との舞台作品づくりに関わる。また、芸能を手がかりにした地域おこしプロジェクトなど、アートと社会のつながりについて日々勉強中。
とある報告会に登壇した際の私のプロフィールです。2007年~2012年頃の経験等を元に作ったものです。
もともと舞台芸術に関係した仕事につく予定は無かったのですが、その周縁にはいつもいたいと思いながら着の身着のまま過ごしています。現在は福井県福井市内にある福井市文化会館内の自主事業を担当するアートNPOで事務局スタッフとして働いています。こう書いていると、福井が出身地なのかと良く聞かれるのですが、実は生まれは大阪です。何で福井に?と問われますが、なんというか「なんとなく」でやってきました。
それだけだとコラムの意味もないので、もう少し詳しく説明しますと・・・
実は芸大時代の卒業制作時期に入った際、その頃の関西(京都・大阪)の舞台芸術に息苦しさを感じていました。どの劇場に観にいっても関係者ばかり、スタッフや役者、限られた人たちで周っている世界だという意識が強くなり、同時に、もっと劇場のすぐ外を歩いている人に舞台芸術を通じていろんな事を想像・創造できる事を伝えるにはどうしたらいいんだ!?という気持ちが大きくなっていきました。
そんな時に出会ったのが現在でも師匠であり、憧れの大人でもあるダンサー・振付家の砂連尾理さんです。コンテンポラリーダンスという表現に対してや、ダンス・踊ることが人間が本来生きている行為の根底にあるのだということを日々学ぶ事が出来ました。さらに、舞台芸術には、娯楽性や余暇にとどまらない可能性があることも感じました。近年、生産性重視になりがちな現代において「非生産性に秘められた豊かさ」がある事を私自身実感しています。そうした舞台芸術の側面に私自身がとても魅力を感じ、なんとかその感覚を多くの人と共有することはできないかと考えながら日々の業務に携わっています。
公共ホールにおける文化芸術振興という事を考えた時には、一般の方が気軽にこれることはもちろんの事ですが、劇場に来られない方(障害者・乳幼児・高齢者・ひきこもり)へどうやって舞台芸術を届ける事ができるのか、一緒に舞台を鑑賞したり制作する事ができるのかと考えながら現在は企画に関わっています。
前回のブログリレー執筆者の植松侑子さんの舞台芸術に関する役割と可能性の考え方には、私自身とても共感する部分が多くあり、ほぼ言いたい事は語られているので是非このコラムの下にある矢印をクリックして読んでみて頂きたいです。
えっと、なんでしたっけ
あ、そうそう 私の今の取り組みですね。
今の担当は、「アウトリーチ事業」と「共催事業」の2つです。「アウトリーチ事業」は、福井県内在住の和楽器演奏家を福井市内の小学校に派遣しています。「共催事業」では福井県内に住む特別支援学校に通う子ども達の舞台発表のお手伝いをしています。
「アウトリーチ事業」では毎回、和楽器の実演家による体験指導とミニ観賞会を行っています。
制作の仕事以外に、幼児を対象とした自然体験教室のスタッフをしていた時にも同じような事がありました。子どもと一緒にお昼ご飯を作っている時に、「失敗してもいいよ~」と声をかける事があったのですが、周りの子ども達が「え?失敗していいの?ええ!?」と心底驚いて言ってきます。大体3~5歳の子どもたちでしたが、もう失敗が許されないといわれてるのか?失敗に対しての不安を持っているのか!?と私自身が更に驚いたのを覚えています。
話が舞台からそれました。つい逸れてしまうのです。ごめんなさい
これから日本ではオリンピックやパラリンピックに向けて文化プログラムや関連事業が開催されていきます。そのこと自体にはあまり個人的には関心がありません。目先のお祭りのためだけの打ち上げ花火的な活用方法で芸術文化が使われてしまうのでは?という不安があるからです。2020年以降にも続いていくことや、今までも継続している活動についてもっと多くの人が関心をもち、考え、自分ごととして取り組んでもらえる事を願っています。
もうひとつの「共催事業」について少し触れておきます。
こちらは福井市内に住む発達に障害やつまづきのあるお子さんとその保護者さんが中心となっている組織「みんなで舞台に立とう!を広げる会」(以下略して(みなぶた))が中心となって毎年秋から、太鼓やダンスの稽古を重ねています。稽古の成果を例年4月の中旬ごろには福井市文化会館のステージ上で発表しています。今年でかれこれ12年になり、今は第13回目の発表会に向けて毎週稽古に励んでいます。
市民の有志の力によって継続されている事業です。スタート当初は小学生ほどだった出演者も今では成人を迎えようとしています。学校を卒業した後に職場や家族のコミュニティとは違った所で、様々な人とふれあえる場が継続できないかと保護者のみなさんは毎年意見を交わしておられます。開催10周年を迎える頃からは、単なる貸館事業に限らず当フォーラムがコーディネーターとして関わることで、外部から音楽家やコンテンポラリーダンスなど、既存の表現に囚われないアーティストを福井にお招きし「みなぶた」の発表に関わって頂くようになりました。プロのアーティストの手によって「みなぶた」の舞台に新しい表現や、出演者一人一人の個性・特性を認めた舞台表現が生まれた事は、我々制作者にとっても保護者の方々にとっても新しい感覚に気付く機会になりました。2017年4月の発表公演においては、幕が下りてもなおアンコールの拍手が会場から沸き起こりました。これには出演者・スタッフも初めての事で戸惑いながらも大変嬉しく、最後は会場も一体となって踊りました。
今年の発表を終えて私個人的に感じたことですが、今の日本では発達につまづきや不安がある状態をなんとかして健常の世界の「当たり前」に合わせようとする風潮に偏っているように感じています。
たしかに健常の方と同じように働いたり、生活したいと思われる方が障害をお持ちの方の中に多数いる事は知っています、しかしながらそれらの常識も障害者の一部であり全部ではありません。まずは、その人がそのままで生きられること、その人のままの存在を個人や社会全体が認められるようになることを強く強く願いつつ日々の業務に向き合っています。
オリンピックパラリンピックを契機としてどこもかしこも「多様性」をキーワードに「社会包摂」「合理的配慮」など障害をめぐって諸分野が社会と障害の新しい関係性の構築を試みています。それは私が属する芸術・文化の領域においても必須の事となってきました。
大都市では研究者や第一線の表現者たちによるシンポジウムなども開催され、多様性への意識付けを行っている最中だと思います。地方自治体の中にはまだそれら意識付けに関して積極的には動いていませんが、今後大きな流れや契機が地方にやって来た時に備えて自らの感覚を研ぎ澄ますことを心がけて行きたいと思います。
そんな話をきっとインターンの方にしてしまうと
現実に打ちのめされてしまうかもしれない!!とここまで書いて気付きました。
今さらですけど、名古屋演劇アーカイブなのに全く演劇の話をしてませんね。
あぁ・・でも全国制作者ブログリレーだからいいのかな。あわあわ。
でもまぁ、今までのことを一度書き出す良い時期だと思ったので書きました。
自分の棚卸ですね。ふふふ。
バトン元のNPO法人Explat理事長の植松侑子さんからのご質問
「舞台芸術が大好きなので、将来アートマネジメントの仕事につきたいんです!どうしたらこの仕事につけますか?」にお答えします。
そうですねー
舞台見に行って、そのうちファンの劇団とかみつけて出待ちとかして、うっかり劇団の手伝いとかはじめちゃったら気が付いたら仕事になってるよ?
って言っちゃいたい気もするし、実際そんな人もいるけど
仕事にしてる人は結構始まりは舞台から遠い人だったりするのでなんとも言えないですね。(笑)うーん。でも仮に目の前に大学生が来ちゃって、しかもちょっとすでに私は気に入ってる学生だったとしたら、という想定でお答えするなら・・・・
「可能な限り自分とは関係なさそうな事や人に積極的に出会うようにと心がけて学生時代を過ごしてね。どこか遠くの芸術祭にいくとかも大事なんだけども、大きなものを見た後には必ず自分が慣れ親しんでる街を丁寧に歩いてみて欲しい。そして今まで見たことのない新しい事ではなく、実際に目の前にいる人とどのようにしたら心地よい場を作りだすのかを丁寧に根気づよく続けて行けば、ひょっとすると仕事になってる事もあるかもしれない。でも一番は日々の暮らしと自分自身を大切にして、少し違うと思ったら距離を取って眺めてみる時間もあっていいし、ずっとこの仕事でなければと思わずいろんな可能性がある事を楽しんで欲しいな」 って所です。ありがとうございました。
今さらですけど、名古屋演劇アーカイブなのに全く演劇の話をしてませんね。
あぁ・・でも全国制作者ブログリレーだからいいのかな。あわあわ。
次のバトンを京都芸術劇場 春秋座 舞台芸術研究センターの竹宮華美さんに回したいと思います。
実は春秋座のある、京都造形芸術大学は私の母校でもあります。竹宮さんは何年か後輩にあたります。頭も良くて頼もしい制作者です。
在学中の事や、普段の仕事などまだまだ知らない事があるので、その辺りのお話が聞きたいなと思います。
そして質問は「制作者として一番やりがいを感じる瞬間ってどこでしょう?」
最近モチベーションの維持について考える事があって気になっているので、是非教えてください。よろしくお願いいたします。