三宅唱監督最新作『旅と日々』プレミア舞台挨拶レポート

『ケイコ 目を澄ませて』『夜明けのすべて』など作品を発表するごとに国内映画賞を席巻し、本作で第78回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門にて最高賞である金豹賞&ヤング審査員賞特別賞をW受賞した、日本映画界を代表する存在である三宅唱監督最新作『旅と日々』(原作:つげ義春  『海辺の叙景』『ほんやら洞のべんさん』)が11月7日(金)より全国ロードショー。

ロカルノ国際映画祭でのワールドプレミア上映後には「傑作。観る者の心を捉えて離さない(Público)」「見るものの感覚を巧みに刺激する(ICS)」「現代映画においてきわめて稀有な存在(Letterboxd)」と、各国のメディアから絶賛の評が続々と寄せられました。また、スペイン語圏最大の国際映画祭である第73回サン・セバスチャン国際映画祭にて、多様で驚くべき映画・新しいアングルやフォーマットに挑戦する映画を上映するサバルテギ・タバカレラ部門へ正式出品されたほか、アジア最大級の国際映画祭である第30回釜山国際映画祭のコンペティション部門にも正式出品され、世界中の映画祭から注目されています。ほか20以上の海外映画祭での上映や、US、カナダ、フランス、韓国、中国、台湾、香港、インドネシア、ポルトガル、ギリシャでは配給が決まっており、世界各国からの熱い視線が注がれています。

この度、10月22日(火)、TOHOシネマズ 六本木にて映画『旅と日々』(11月7日全国公開)のジャパンプレミア上映イベントが開催され、監督の三宅唱、キャストのシム・ウンギョン、堤真一、河合優実、髙田万作が登壇しました。イベントではロカルノ国際映画祭の最高賞となる金豹賞のトロフィーも披露され、キャストはそれぞれ三宅監督作品への出演経緯、そして映画の見どころについて語りました。

『旅と日々』プレミア舞台挨拶 オフィシャルレポート

朝から小雨の続くすっきりしない天候にもかかわらず、いま最も勢いのある日本人映画監督でもある三宅唱監督のジャパンプレミアとあって、満席の観客で埋まった場内。映画『旅と日々』の主要キャストであるシム・ウンギョン、堤真一、河合優実、髙田万作、監督の三宅唱が登壇すると盛大な拍手が巻き起こった。

記念すべき日本初上映の日を迎えて、キャストの4人は、それぞれに三宅唱監督作品を絶賛。主演のシム・ウンギョンは、出演オファーを受けた時の気持ちを「最初はぜんぜん信じられず、『本当にあの三宅唱監督ですか…?』とマネージャーに何度も聞き返した」と打ち明ける。脚本を初めて読んだ時の印象も、「(これは)わたしの話ではないか?」と思うほど、強い親近感を感じ、「運命的な作品」とまで言い切ると、「三宅監督の『ケイコ 目を澄ませて』が大好きだった。いつかご一緒したいと思っていたが、こんなに早くチャンスが訪れたことに驚き、出演を決意した」と喜びを語った。

堤は、「脚本を読んだら、山形の庄内弁を話す役で、なぜ関西出身の自分に?とオファーに驚いた。『山形弁はナンちゃって(みたいな感じ)でいいですか?』と尋ねたところ、『…ガチでやってください』と言われ、徹底的に方言テープで勉強した」と告白。監督の作品は「嘘っぽいところがなく、すべてリアルに感じる。それに応えることは大変だと感じたけど、自分にとっては大きなチャレンジだった」と語った。

シムと同じく三宅監督作品のファンだったと語るのは、河合優実だ。「すでにまた三宅監督作品に出演することが目標。いま、日本で俳優をしている人で三宅さんの作品に出たい人はいっぱいいると思う」と出演できることの幸せをしみじみと話した。登壇したキャストの中で、唯一オーディションを経て参加したのは、髙田万作。本作に出演したことを「俳優人生だけでなく、自身の人生においても大きな節目となる作品」だったと熱く語った。キャスト全員から絶賛されたことから、「ちょっと、もう三宅の話はこれくらいにしましょうよ」と三宅監督が照れると、場内のあちこちからクスクスという笑いが起こる。監督はキャスト陣について、「演技しているというより、本当に『そこにいる』人たちのようだった」と三宅監督ならではの表現で最大級に高く評価した。

今回、つげ義春のマンガが原作になっていることについて「つげさんのマンガは、コマからコマへ、ページをめくるたびに驚きが連鎖していく。だから、あえていえば、そのような驚きが生まれる映画になれば面白いなと考えていました」と三宅監督は語った。本作の好きなシーンを尋ねられた堤は、「芝居をしていない風景の描写が奇跡的で、街の雰囲気も含めて、自然の描写が素晴らしい」と応じると、河合も「特定のシーンではないけど、(映画前半と後半の)二つの季節、海と雪景色の描写が印象的。ただ見ているだけではなく、観客も登場人物の身体に入ったように感じられる『肌感』がある」と驚きを打ち明けた。髙田は少しおどけて「ぼくの演じた夏男は、可哀想な目に遭うことが多くて、そのシーンが忘れられない」と打ち明けると、三宅監督や堤も大きな笑いで応えた。

トークの最中には、8月に行われたロカルノ国際映画祭にて最高賞となる金豹賞のトロフィーも披露された。改めてトロフィーを見た感想を尋ねられると、三宅監督は「作品賞は多くのスタッフの力で成り立っているので、大変嬉しく思います」と雪の中での撮影など、画面に映らないところでの働きも含めて作品が認められたことへの喜びを露わにした。ロカルノに参加していたシムと河合も同じく感想を求められると、シムは金豹像をまじまじと見つめ、「…ピカピカですね」と映画の李(イ)のようなユーモラスなコメント。ふいに「河合さんは(現地で)泣いていましたよね?」とシムが振ると、河合は「え?わたし、泣きましたっけ?」と返答。シムが「泣きましたよ。私はあまりに驚きすぎて夢のような感覚で泣かなかったんですが」と話すと、場内からも大きな笑い声が起こった。ロカルノに参加できなかったため、今日、初めてトロフィーに触れた堤と髙田も「思ったよりズッシリだね(重い)」と、素直な感想をもらした。

最後の締めの挨拶では、三宅監督は観客への感謝と映画を心から楽しんでもらいたいと語り、さらに「映画鑑賞後には、ぜひつげさんのマンガをぜひ読んでほしい。他にも面白いマンガがいっぱいある」と強く勧めるとともに、「劇場でまた映画を見てほしい。この映画にはそれぞれに美しさがある。実際の季節を楽しむように、映画を楽しんでほしい」と語った。河合は「初号試写で観た時から大好きな映画。いち観客として様々な要素が詰まった豊かな映画だと感じている。帰るときは、様々なシーンや自分の人生と重なる感覚を思い出し、噛み締めてもらえたら嬉しい」と映画への想いを語った。堤は、「冬の陰と夏の陽のような絶妙なバランスを感じてもらいたい。1人でも多くの人に見て欲しいし、この映画の良さを伝えて欲しい」と熱く語った。髙田が「こうして映画を見てもらえて感無量」と話すと、最後となったシムは「この映画を通じて、映画の力、映画館へ行く楽しさを改めて感じてもらえたら幸いです」と締め括った。

『旅と日々』作品情報

行き詰まった脚本家が旅先での出会いをきっかけにほんの少し歩みを進める――
世界の映画祭が注目する三宅唱監督が贈る、今秋最注目の珠玉のロードムービー

強い日差しが注ぎ込む夏の海。ビーチが似合わない夏男が、影のある女・渚に出会う。何を語るでもなく、なんとなく散策するふたり。翌日、また浜辺で会う。台風が近づき大雨が降りしきる中、ふたりは海で泳ぐのだった……。
つげ義春の漫画を原作に映画の脚本を書いた李。「私には才能がないな、と思いました」と話す。冬、李はひょんなことから訪れた雪荒ぶ旅先の山奥でおんぼろ宿に迷い込む。雪の重みで今にも落ちてしまいそうな屋根。やる気の感じられない宿主、べん造。暖房もない、まともな食事も出ない、布団も自分で敷く始末。ある夜、べん造は李を夜の雪の原へと連れ出すのだった……。
監督を務めるのは、『ケイコ 目を澄ませて』(22)、『夜明けのすべて』(24)など、作品を発表するごとに国内の賞を席巻し、これまでベルリン国際映画祭に3作が出品されるなど、現代日本映画界を牽引する存在として世界中で注目を集める三宅唱監督。原作であるつげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を見事な手腕で現代的にアップデートする。 韓国出身ながら日本映画界に不可欠な俳優であるシム・ウンギョンを主演に、べん造役に映画、テレビ、舞台と縦横無尽に活躍する俳優・堤真一、渚役を2024年に数々の映画賞を獲得した河合優実、夏男役を『流浪の月』に出演し注目度の上がっている髙田万作が演じる。さらに、つげ義春作品に欠かせない俳優・佐野史郎がひとり二役で花を添える。

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『旅と日々』

11月7日(金)TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国ロードショー

シム・ウンギョン
河合優実 髙田万作
斉藤陽一郎 松浦慎一郎 足立智充 梅舟惟永/佐野史郎
堤真一

© 2025『旅と日々』製作委員会
監督・脚本:三宅唱
原作:つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
製作:映画『旅と日々』製作委員会
製作幹事:ビターズ・エンド、カルチュア・エンタテインメント
企画・プロデュース:セディックインターナショナル
制作プロダクション:ザフール
配給・宣伝:ビターズ・エンド
公式X:@tabitohibi 公式Instagram:@tabitohibi_mv
#映画旅と日々 www.bitters.co.jp/tabitohibi