かこまさつぐさん
まずは稽古を見学させていただき、そして稽古終了後、次の日も朝から稽古があるにも関わらず、快くインタビューに応じていただきました。また、試験管ベビー立ち上げ時から参加している、制作であり、女優でもある加藤奈々さんにも参加していただきました。
小説→映画→演劇

ではまず、演劇を始めたきっかけを教えてください。

■かこまさつぐさん(以下かこ):映画をやりたくて。映画を撮りたかった。映画に携わりたかった。

携わることができるならなんでも良かった?

■かこ:割となんでも良かった。

それがどうして演劇に変わっていったのですか?

■かこ:まず、一番てっとり早いのが役者だと思った。

映画に携わる為に?

■かこ:そうそう。好きな俳優の出身を見ると、劇団出身の人が多かった。

それで結局映画に行かなかった?

■かこ:行かなかった。

それは演劇が楽しかったから?

■かこ:映画を作ったことがないから、映画の楽しさはなんとも言えないけど。お芝居は素敵だなあって思った。

役者から入って、今は脚本演出になってるじゃないですか、メインが。

■かこ:元々映画やりたかった訳だけど、お芝居とか映画とかに目覚める前は、小説家になりたかった。

それは映画に携わりたいと思う前?

■かこ:前。中学高校くらい。

試験管ベビーという屋号

そして試験管の立ち上げに繋がっていく訳ですが。ぼくの試験管の印象は、他の劇団だと、役者やってて、それを持続させる為に働く人が多い。試験管は逆で、本業がまずあって、それで、役者をやってる人が多い。

■加藤奈々さん(以下加藤):うちらのスタンスとしては長く続けるというのがある。ずーっと試験管ベビーが団体として残っていくことが大事。それが例え、かこくんとかが脚本を書けなくなった時にでも、試験管ベビーっていう冠がちゃんと残れるようにしたい。

■かこ:何代目代表とか。試験管ベビーという屋号がずっと残っていくのが理想。ぼくは別にやめたい訳じゃないけど、生きていればなんらかの事情があったりするから。普通に当たり前のように続いてほしい。

■加藤:続けることが大事。その為には生活も続けていないと、続けられない。

演出家にその思いとか姿勢を伝えることをできる人じゃないと、お客さんにも伝えられないと思う。

他の劇団って結構平日の夜に稽古したりしますけど、でも試験管って、土日が主体ですよね。その限られた時間内でどのように結果を出すのか。

■加藤:最初のほうは平日も稽古してたんですよ。それは知多半島の人ばっかりだったから。今は名古屋とか色々な人がいるから、物理的に平日に稽古できないんです。

かと言って手を抜いて作ってる訳じゃないですよね。

■かこ:やれると思っているから、土日にしている訳で。ぼくら集中力があるかと言ったらそうでもないけど、でも明らかに、平日の夜稽古しているより、集中力が全然違う。その時しか見てもらえない、その時しか会わない、見せられないってなるから、1週間経って、(台本を)読んでこないとどれだけ意味がないかってことが分かる。

稽古中、結構怒られてる人いましたね。

■かこ:そうそう。そういうのが凄く響くから、怒られた人はたぶん、今日読む。そして明日また怒られてると、いいな。来週まで引っ張れるな。

■加藤:読んでこいって言っても、やれない奴はやれない。かこくんは努力をしない奴には冷たい。

役者としてというより、試験管に合わない?

■かこ:人間としてのスタンスが。今は割とラフな仕事取ってるから、平日の夜でも合わせられるけど、前は、(平日の夜の稽古には)絶対に行けなかった。でも、出来ない奴はどうやって努力を演出家に見せるか。自分はできないから見てくださいよ、とか。言えるか言えないか。

そういうことを言える人なら許容できる。

■かこ:許容できるし、絶対にうまくなる。

結構意外ですね。そういうこと言われても、無理って言いそう。

■かこ:いや、無理は無理だし。でも、無理とか無理じゃない関係なく、その思いとか姿勢を伝えることをできる人じゃないと、お客さんにも伝えられないと思う。

お客様参加システム

じゃあお客さんの話が出たので、そちらに移ります。試験管で、お客様参加システムというのがありますよね? それって単純に盛り上げるってこともあると思いますが、その辺の意図とかありますか?

■かこ:まず、(劇場という限られた空間の)中でやっている。目の前にお客さんがいる。のに、そのお客さんと、物理的な接点がないのは、非常に不自然。だったらビデオとかでいいじゃんって割と思って。10人で刑泥するより、200人とかでやるほうが絶対に面白くなる。舞台って、そういうことを許容している人たちが来ると基本的に思う。劇場に足を運ぶというのはもの凄く覚悟が必要だし、素晴らしいことだと思っているから、こっちからも手を差し伸べたいし、こっちにも手を差し伸べられたい。と思うから、露骨に物理的にやってる(笑)。別に無理してすることはないとも思うけど。

やっぱりお客さんありきなんですね。

■かこ:そう。お客さんありき。

試験管は基本的にお客さんに楽しんでもらうスタンス? お笑い系と言っていいのか分からないけど。

■かこ:お笑い系なのかな。いや、お笑い系と言われれば、笑うという意味ではお笑い系だけど。コントもやってるし。

笑いと言っても色々ジャンルがあるじゃないですか。試験管はどっちの方向に向かっているかなと。例えば、ダウンタウンとか。あとはダチョウ倶楽部とか。

■かこ:基本ドリフ。

ドリフ?

■かこ:でもドリフとなにが違うって、笑わせることがメインじゃないというか。ドリフは笑わせることがメイン。自分たちは、笑うっていうか楽しんでもらう。芸人みたいなスタンスではない。

楽しんでもらうという中に笑いがある?

■かこ:そう。

せっかくだったら、大勢で一緒に観た方が楽しい。

じゃあ最後に、舞台を観に行くにあたって、試験管のここを観てほしいというところがあれば。

■かこ:観に行くにあたって、自分以外にもうひとりお客さんを連れて来て欲しい。

それは商業的に(笑)?

■かこ:いや、商業的にというか。家で一人で観るものじゃないから、せっかくだったら、大勢で一緒に観た方が楽しい。参加もあるし。ジェットコースターに一人で乗るより、皆と乗る方が楽しい。

やはり客が多いことが前提。

■かこ:全員が全員同じところで笑う必要はないけど。ここが面白いんだこの人とか、横をみながら。なにも舞台だけ観なくてもいいよ、というのが他の劇団と圧倒的に違う。舞台に集中しなくていい。他のお客さんが何に受けているかとか観てくれればいい。

じゃあ舞台というより、全体の空間を楽しむということでしょうか。

■かこ:そう。

今日は長いことお付き合いいただきありがとうございました。

■かこ:いえいえ。