20歳になって急激に体力の衰えを感じ始め
國吉さんが演劇を始めたきっかけを教えてください。
■國吉咲貴さん(以下國吉):小学生のとき、半年に一度くらいのペースで、旅回り劇団みたいなものが学校に来てくれて、体育館で演劇をやる時間がありました。それがずっと楽しみだったのですが、私は人前に出ることがずっと苦手だったので、自ら演劇をやろうとは考えたことがありませんでした。なのでそのまま演劇部とかにも入らず生きてたのですが、20歳になって急激に体力の衰えを感じ始め、いつ死ぬかわからないなと思ったら一度演劇に手を出さないと後悔しそうだと思い、役者を始めました。
作品を書き出す前はよく遊びます
これまでに最も影響を受けた人物や作品を教えてください。
■國吉:「ハロルドとモード」という映画が好きで、いつかあんな作品が作りたいと思ってます。生も死も愛も全部笑いに変えてしまってて、それが不謹慎とかじゃなくて、もうただただ愛しくて可愛くて、執筆につまったときはよくハロルドとモードを見て頭をリフレッシュしてます。戯曲を書き始めたのはオイスターズさんの「ここでいいです」を見て衝撃を受けたからです。脚本の勉強を始めたころは、お風呂でのぼせるまで宮藤官九郎さんのシナリオを読むのが日課だったので、今でも宮藤さんのシナリオ読んだだけで頭が沸騰する感じがします。体が覚えてしまっているようです。私も誰かを沸騰させるような作品が書けるようになりたいです。
作品のアイデアはどのように生まれますか。
■國吉:常に何かネタはないかと思いながら生活していて、疑問やイライラしたことなどはメモしています。そういうものを合体させたりしていじっていると、急にピコーンって思い付いたりします。あとは動物園や遊園地など、頭を使わないで楽しめるところにいたほうが何かを思いつく頻度が多い気がするので、作品を書き出す前はよく遊びます。
キャラクターがみんなに愛されますように
戯曲を書く上で意識されていること、こだわっている所があれば教えてください。
■國吉:テーマやキャラクターをなるべく歪ませて書くように意識しています。戯曲を書き始めたときは、どれだけわかりやすくまっすぐ書くか、というのを考えていたのですが、最近になって歪んでたり遠回りしてしまう人のほうが可愛いな、と思うようになったので、まっすぐしすぎてないか、というのは気にします。台詞としては、活字で読んだときに言葉が体にするんと入ってくるかと、喋ったときに口が気持ちいいかは書くときに意識します。あとは出てくるキャラクターがみんなに愛されますように、と祈りながら書くので、悪者が出てきません。
自身の戯曲の癖や特徴を教えてください。
■國吉:シュールだねとよく言われるのですが、シュールにしようと思ってないので癖なのだと思います。独特な言い回しが特徴的だねと言われることもあるのですが意識してないので癖なのだと思います。私が書きたいことが重かったり不謹慎だったりするのですが、そういうものをコメディにしているので、設定が突飛なことが多いです。人間以外のものや、男性が女性を演じることを前提に書いたキャラクターなどがよく出てきます。笑っていいんだかわからないと言われることが多いです。
青春を取り戻していっている気分になります
演出をする上で気をつけていることがあれば教えてください。
■國吉:自分の作品を演出するときは、役者さんありきの台詞なので、私の頭の中のものを再現するのではなくて舞台上のものを100点にしようと気を付けてます。役者さんが喋りにくそうだったらすぐ言いやすいように変えて、舞台上でなるべく嘘のない状態を目指します。 自分のではない戯曲を演出するときは、言葉と台本の中の空気を大事にします。どちらの場合も、私がお金を払って客席で見たときに楽しいかを考えます。
演劇をしていて楽しいこと、逆に辛いことがあれば教えてください。
■國吉:何やろうかなと考えることも、書くことも、劇場探しもキャスティングも小道具作りも全部が楽しいです。その中でも稽古で皆で作品を積み上げていく過程が一番楽しいです。学生時代が本当に私は泥のような生活をしてたので、演劇をしていると青春を取り戻していっている気分になります。演劇に触れてるとアドレナリンが出ます。逆に辛いことも全部です。
ちゃんと傷つける人が好きです
一緒に活動するうえで、相手にもっていて欲しい能力や要素があれば教えてください。
■國吉:舞台上で息が出来てて、ちゃんと傷つける人が好きです。傷つく姿が魅力的な役者さんが好きです。稽古のときにアイデアをたくさん持ってきてくれる人、台詞覚えが早い人は尊敬します。私の台本は変更が多いので、出演してくださる方は瞬発力のある方が多い気がします。劇団員としては、私が思いつきのままに生きているため、突然の思い付きについてきてくれる人と、今は切実にパソコンを扱える人が欲しいです。
365日演劇が出来たらいいのにな
今後の目標や取り組んでみたいことはありますでしょうか。
■國吉:ロングラン公演とツアーをやりたいです。目標は劇団員全員が演劇をしていける環境を作ることです。365日演劇が出来たらいいのにな、とずっと思ってます。
演劇の面白さ、魅力をどういう所に感じますか。
■國吉:テレビだと言えないことも描けるし、どう描いてもいいし、よくも悪くも正解がないところが面白いです。勝手にこれは書いちゃだめかな、とかラインを意識してしまっていたのですが、最近改めて、演劇は自由だし、自分はまだまだ自由な位置にいるのだな、と実感してから更に楽しくなりました。私は飽きっぽいので、演劇のどこまで行ってもゴールがないところは凄い魅力です。