高間響さん
京都の劇団、笑の内閣の高間響さん。得体の知れないパワーを感じる非常に面白い方でした。元出演者の方も何人かおられましたが、皆さん口を揃えて「こいつはクズだ」といじる辺りに、いかに周りに愛されてる人なのかがわかりました。また今回は『NPO法人うぐいすリボン』の荻野幸太郎さんにも同席頂いております。

エリートだと思っていますので

高間さんが演劇を始めたきっかけを教えてください。

■高間響さん(以下高間):ぼくは結構あれなんですね、小学校の学芸会から活躍してたんです。主役張ったりしていました。小さい頃から怪獣の人形とか使って友達と話を作ったりするのが好きだったんです。学芸会の劇も先生が持ってきたものを「面白くない」って言って俺が書くとかやってたので。演劇やってる人って学芸会とかではあんまりとか、大学から始めたって方が多いと思うのですが、ぼくはそういう中ではエリートだと思っていますので。でも演劇エリートもなにも、劇団があるような都会では無かったので。北海道の田舎の学校でしたから。本格的にしたいなと思ったのは、中学の時に三谷幸喜さんの『笑の大学』を観てからですね。それで高校で演劇部に入って現在も続けているという感じですね。

劇団立ち上げの経緯を教えてください。

■高間:大学3回生で卒団となり、どこかに入りたいというのもなかったので、自分でやってやろうかなって。あれよあれよと7年も。場つなぎにやろうとしてたんですけどね。最初は大学の同期とユニットという感じで。現在のメンバーはだいぶ変わりましたけど。

和泉元彌vs鈴木健想は完成されたコメディーだなと思っていて

最も影響を受けた作品や人物を教えてください。

■高間:やっぱり三谷さんですね。あとは江頭(2:50)さんですね。どんな手を使ってでも笑わせるというのは凄い。大川興業も好きです。でもどちらかというとプロレスのほうが影響を受けている。笑の内閣では『プロレス芝居』というのをやっているんです。それで、名古屋に『スポルティーバ』というスポーツバーがあるんですよ。本物のリングがあるんです。話を貰ったこともあるんですけどね。そこに行ってみたんですけど、「ここでやったら俺たち死んでしまう」と思って。プロレス的手法というのは影響を受けましたね。『ハッスル』とか名古屋に観に行きましたもん。和泉元彌vs鈴木健想は完成されたコメディーだなと思っていて。

「どんな手段をもってしても笑わせる」ということですが、これはやってはいけない、というラインはありますか。

■高間:怪我したら駄目ですね。安全第一です。あとは身体的に精神的に著しく傷つけるのは駄目だと思いますね。悪い言い方になっちゃいますけど、表現というのは多少人を傷つけてもしょうがない部分はあると思うんです。傷つけないと言ったら表現できない。身体的精神的のラインをどこにするのかは常に迷っているところです。自分の中でもやっちゃいけないということはたくさんあるけど、それが多くの方と一致しているかは分からない。もしかしたらこんなところまでやっちゃいけないですよ、というところまでやっているかもしれないし、考え過ぎてぬる過ぎると思われているかもしれない。常にそのライン引きは考えています。常に迷いながらやっています。

笑えなかったら意味がない

演出するうえで最も重視していることがあれば教えてください。

■高間:うちはコメディーなんで、とにかく笑えるかどうかです。笑えなかったら意味がない。それが重要です。

笑いを重視するということですが、高間さんのイメージと役者のイメージが離れている場合はどのように調整しますでしょうか。

■高間:時と場合によりますよね。当て書きしているので、イメージが離れているというのはあまりないです。喧嘩する時は凄く喧嘩しますし。突っかかってくる奴は突っかかってきますから。客演でも遠慮することはないです。でも今はほとんどが年下になってしまっているので、向こうが遠慮してきますね。

演出家に必要な能力はなんだと思いますか。

■高間:まず完成が見えてないといけないですね。でもそれにこだわり過ぎないことです。完成形を見つつも、アドリブで「こっちのほうがいいじゃん」って変えていきます。

稽古しながら台本がどんどん変わっていくのでしょうか。

■高間:それはもう毎回書き直しています。台詞を変えたのを全部書き留めて貰って、打ち直して刷ってきてくれる、そういう役割の人がいるんです。ぼくはね、台本を書き換えたりメモしたりが面倒臭い。

そういう方がいない時期はどうしていたのでしょうか。

■高間:書き直してぐちゃぐちゃになった台本を使っていました。オペがね、「全然台本違うじゃねーか」と言ってきました。「できねーよこんなんじゃ」って。

そういうのをずっとやってきているということであれば、役者の方もすぐ対応できるようになっているのでしょうか。

■高間:そうですね。台詞は変わるものだと思っています。

本番中のアドリブは大丈夫なのでしょうか。

■高間:うちはアドリブには寛容です。笑えれば。笑えなかったら怒りますけど、結果出せば。ただ、『シーンを著しく伸ばすこと』と『完コピのシーンを完コピしないこと』は許さないです。2倍以上伸ばすことは駄目です。掛かっているシーンを。また、うちはパロディーをやるのですが、そのシーンは完コピしないと意味が無い。それでアドリブを入れる時は駄目って言います。

10個のものを60点づつ取って600点取ったほうがいい

一緒に活動するうえで相手に必要な能力や要素があれば教えてください。

■高間:これまで人には恵まれていると思っているので。ただ、いま欲しいのは法律に詳しい人ですね。どこまでやったら訴えられないとか。法律の専門家がいると、色んな解釈とかも出来ますし。

『非実在少女のるてちゃん』のようなテーマを取り上げる際にはどのような勉強をされているのでしょうか。

■高間:本を読んだり、集会を見に行ったりもしました。凄く勉強はしますね、やるテーマに関しては。

今後笑の内閣では、こういう社会的なものを扱うお芝居もやっていくのでしょうか。

■高間:時事ネタ系はうちの主力にはなると思います。書きたいテーマが色々ありますし。

そういう意味でも法律家が欲しい。

■高間:まあいないと思いますけどね。色々なスタッフが居たほうがいい。基本的にぼくは大風呂敷を広げるので。物事をきっちりやるということに興味がない。広げた風呂敷に対して介添えをしてくれる人が欲しいですし。ぼく、名刺とかちゃんと管理できないんですよ。

ここで笑の内閣の元出演者から、高間さんがいかにクズであるかという説明が入ります。

■高間:ほんとにねえ、物事をちゃんとするということにね、劇団員にもよく怒られるんですけれど、ぼくはね、ひとつのことを100点満点でやるということに全く興味がないんですよ。10個のものを60点づつ取って600点取ったほうがいいと思うし、5個に絞ったところで60点くらいしか取れないんですよ。今回のゲストだなんだも、アフタートークをやるならもっとちゃんと芝居やれよって言われるんですけど、手を広げてしまう。

これで5大ドームある街を制覇できるな

演劇を通して表現したいことがあれば教えてください。

■高間:ただの馬鹿をやりたい。プロレスも再開したいですし、欲張りに色んなことをやりたい。フラフラしてるんですけど。安定して長く続けたいっていうと「売れたい」ってなると思うんですけど、フラフラしてるんですよね。

制作の方はおられないのでしょうか。

■高間:いればだいぶ楽なんですけどね。現在は4人で活動しています。出てる方とか皆団員だと思っている人もいますけどね。実は団員じゃないって人が多い。

今回は4都市公演をされるということですが、どういう経緯で決まったのでしょうか。

■高間:名古屋に関しては完全に荻野さんに呼ばれました。

■荻野幸太郎さん:以前京都でやった時に拝見させて頂きまして、我々は表現の自由に関する団体ですから、非常に良い芝居だなって。単純にエンターテイメントとしても面白かった。そういうことがあって、その後に飲んだ時に「地方でやってみたい」という話が出まして、地方でやるには金銭的な面と動員に不安がある。でもそこを協力して頂ければという話だったので、なら出しますよと。

■高間:東京は元々決まっていて、当然地元(大阪、札幌)でもやる。名古屋は時期尚早かなと思っていたのですが、東京でやるんだったらせっかくだからもうひとつ追加して。福岡公演もやったので、これで5大ドームある街を制覇できるなって。ナゴヤドームで野球観たからなんだって話ですけど。

言い足りないことは他にありますでしょうか。

■高間:たくさんの方に来て欲しいです。名古屋にはまたたくさん遊びに来たいですので。

ありがとうございました。

■高間:ありがとうございました。