中屋敷法仁さん
東京の劇団『柿喰う客』代表の中屋敷法仁さん。大人の頭脳と少年の心を持った方、という印象を受けました。まるで好奇心の塊に手足が生えて動いているようです。
すげえぞあいつ

演劇を始めたきっかけを教えてください。

■中屋敷法仁さん(以下中屋敷):地元が青森の田舎で、演劇鑑賞会が地元にあったんですね、演鑑。その演鑑が2ヶ月に一回くらい、中央でやってる芝居の旅公演を買い取ってるんです。文学座とかこまつ座とか、無名塾。それで演劇と出会ったんですね。生まれて初めて観た演劇が無名塾のリチャード三世。それを小学校の中学年で観て。絶対分からないですよね。でもうちの親が「お前は観たほうがいいから」と観せられて。リチャード三世って時代背景とか人間関係が複雑で、内容とか予備知識とかたくさん知っておかないといけないような演目だから全く分からないんですよ。でもこれは凄く面白いぞと。凄いエネルギー。仲代達矢が、なんかよく知らないおじいさんが出てるけど、すげえぞあいつと思って。それから2ヶ月後には東京ボードヴィルショーが来て、どんどん引き込まれていったんですね。それと同時に、子供の時全く褒められなくて、なにをやっても。勉強もスポーツもできない訳じゃないんだけど、自分の中で突っ切らないなって。そんな時に、演劇をやったら信じられないくらい褒められて。やった褒められた、と思って。これはどんどんやっていこうかなと思ったのがきっかけです。

演劇を始める際に、演劇部に入ったりしたのでしょうか。

■中屋敷:最初は小学校の学芸会。中学校に入ったら自分に色々な欲求が出て来て、勝手に市の文化祭に応募して作演をやっていました。

中学で?

■中屋敷:中学1、2年。作演、主演もやっていました。俳優仲間とかいない訳だから、友達連れてやっていました。小学生から観ていたものが早かったですね。当時シェークスピアとか読み漁っていました。チェーホフもガンガン読むような、演劇大好き少年でした。当時は二人芝居でラーメンズっぽいコントを作っていた気がします。更に言うと、中学の時は学芸会の顧問が弘前劇場とかに参加していた普通の俳優さんなんですよ。その人のちゃんとした指導があったなと。学芸会とは思えないみっちりとした稽古を。

高校では。

■中屋敷:高校では演劇部に入りまして。中学の頃から、そこの演劇部に入りたいと思って。

高校はその演劇部目当てで。

■中屋敷:目当てで入りましたね。函館ラサール高校ってところがあって、そこも受かったんですけど、でも演劇部ないから駄目だって言って。ここは嫌だって。

そこの演劇部は強かったのでしょうか。

■中屋敷:最弱、ですね。一回戦敗退しかしたことないような。

そこで作演を。

■中屋敷:はい。高校二年の時に作演を任されたんですね。でもぼくって凄い自信家というか理論家だから。演劇部が肌に合わなかったんですね。ぼくは作品を作りたくて演劇部に入ったんだけど、やっぱり演劇部は部活だから仲良くしなきゃいけない。作品作るのに先輩後輩関係ないはずなのに、あるんですね。でも、なんとか頑張って地区大会突破できたんですよ。それから県大会進出の時に内部揉めがあって、ぼくだけボイコットして県大会行けなかったんです。その作品では作演、主演だったんですけど、県大会の切符を手に入れた瞬間、一旦演劇から離れました。

結局、その作品はどうなったんでしょうか。

■中屋敷:主演だけを違う俳優で。でもその大会で脚本賞を貰いました。中屋敷不在のまま。それから3年生になった時に、後輩も付いて来てくれそうだから、作演出家が作品を作るという体制でいきたいと。他の高校のように顧問が仕切る演劇部じゃないんですよ、うちはそもそも。それは良いことなので、演出家たる生徒が座組を使って作品を作りたいんだという話をして、高校3年の時に『贋作マクベス』を。これは格好良いことに、全国大会まで進出するという。我ながらよくこんな漫画みたいな展開を。これは格好良かったですねえ(笑)。全国大会に行って、平田オリザから脚本賞を貰うという格好良さがありました。

テニスサークル楽しいですよ

大学に入ってからは。

■中屋敷:青山学院大学という大学に入りました。で、演劇辞めようと思ったんですが。

それはどうしてでしょうか。

■中屋敷:東京の小劇場がどういう状態か分からないから、ちょっと様子見ようかと、テニスサークルに入ったりして。テニスサークル楽しいですよ、美男美女ばっかりで。うわ、楽しそうだなと思って。楽しいキャンパスライフが送れると思ったのですが、ちょっと東京の小劇場行ったら状況が酷くて。東京は観劇人口が非常に多いので、動員が少なくて潰れるということはあまりないんですね。頑張れば300人くらい観客呼べるんです。簡単に呼べます。そういう甘い劇団が多すぎて、これは駄目だなと。俺演劇やらないと駄目だなと。それで演劇サークルに入りました。なんか東京に甘えてない、と思っちゃって。

演劇サークルでも作演を。

■中屋敷:これは1年生でやりましたね。入学して3ヶ月でもう作演出やりました。

じゃあテニスサークルは3ヶ月で…。

■中屋敷:テニスサークルは参加して2回くらいで辞めました。

さっき楽しいって言ってたのに(笑)。

■中屋敷:飲み会とか、新入生歓迎コンパばかり行ってました。結局入りませんでしたが。1年の夏にはもう先輩を使ってましたね。ここでも実は問題があって。やっぱりサークルという体質があるから、どうしても駄目だったんですよ。サークルは楽しく、思い出作りの為だとはっきりと打ち出してますし。で、俺は外で劇団を作ったほうがいいんだなと思い、青学の2年になる前くらいに『柿喰う客』の発足を考えました。つまり、自分が作りたいものをやりたいんだったら、自分で責任を取れる団体を作らないといけないんだと。大学のサークルのお世話になってると駄目だと。自分がやりたい、自分が面白いものをやるんだったら、ちゃんと責任を持てるように。社長にならなきゃ駄目なんだということで団体を作る決意をしました。また、ぼくが大学2年の夏くらい頃、横浜の演劇団体がショーケースイベントを3劇団合同でやるということで参加する劇団を探していて、やってみないかと言われ、これはいいタイミングだと思い、そのショーケースイベントに参加するという名目で劇団を作ったんです。そのイベントに参加する為に一回作ってみようと。

大学の教授に「売れる劇団名を」と相談したとか。

■中屋敷:名前はどうでも良かったんですね。作風もどうなるか分からないから。でもやってみたら今みたいな芝居でしたね。

立ち上げ当初から、今の作品の方向性みたいなものは見えていたんですね。

■中屋敷:出てましたね。東京に出てきて、どんな芝居が出来るのか不安だったんですが、やってみたら、ドラマとしても奇抜な物語で。最近は手法の奇抜さが目立ってますけど。

改めて、『柿喰う客』の名前の由来を教えてください。

■中屋敷:売れる名前ならなんでもいいと思って。売れる名前の法則というのをとにかく勉強し、ひとにも相談し、行き着いたのが柿喰う客だと。凄いですよね。こういうのを表現したいんだ、という名前じゃないんで。息子が幸せになればなんでも良いという感じで。画数占いとかに頼るようなものです。でも字画だけは調べなかったですね。どうなんだろう。

中屋敷さんが『モーニング娘。』の「。」は間違えられてる為に付けている、という話をしたのを前に聞いて、深いなと思いました。

■中屋敷:売れるルールというのは結構色んなものがあるんだと。柿喰うの「喰」は間違えやすいからやめたほうがいいんじゃない、と言われることがありますが、間違えやすいからやってるんだと。あれは間違ってもらう為にやってるんですね。皆間違っていて、誰も彼も。でもそれはいいんですよ。もっと頑張ればいい。間違えない人が増えてきた時に、認知されてきてるなと気づかされました。

間違えやすいというのは、話題になりやすい、というのもありますよね。

■中屋敷:丸がないじゃないか、という。

めちゃくちゃ受け入れます

では次に演出に関する質問を。特に演出上で気を付けていることはありますでしょうか。

■中屋敷:理解できない言葉は喋らないようにしています。演出家はイメージ力なんですけど、イメージは演出家の中にあれば言い訳で、そのイメージに俳優をどれだけ近づけるかをちゃんと提示してあげないといけないんです。イメージは飲み会で喋ればいいんです。的確な指示が出ないと稽古場では。演出家はコーチなので。選手が動けないようなこと言わないですよね、スポーツのコーチは。ちゃんとあなたのトレーニングはこれで、このような運動をやることによって、試合に対しての準備ができる、ということを説明しないと選手は不安ですよね。日本語がうまくないので、説明はちゃんとしないとなと思っています。

自分はこうしたい、という役者がいたらどうされますか。

■中屋敷:めちゃくちゃ受け入れます。基本的にコミュニケーションをとる稽古場なので。指示が的確だったり明確だったりすると、役者はやるだけの機械になるだけじゃないのかという意見もありますし、それは非常に誤解されやすいのですが。皆でルールを作るんですね。ここは腕をピンとしなきゃいけないということがあれば、どうしたらピンとなるんだろうとか、俳優同士でも相談できるし、違うやり方はどうなんだろうね、とか話題になりやすい。課題が出来てから、話は受け入れます。できないと甘えになってしまうので。台詞もラップだったりしますけど、役者が色々な提案をしてくれますよ、最近は。段々皆分かってきてくれてるんだと思います。

劇団内には暗黙のルールというものはあるのでしょうか。

■中屋敷:色々ありますね。基本的に提案は大丈夫。あと、稽古場で今回の作品が面白いかつまらないかの話は絶対にしないです。これは創作団体として非常に優秀なところだと思っていて。これは文句を言うな、ではなく、そういう状態にはさせないようにしています。考えさせないんじゃないんですけど、ぼくも興味がないし、作品に参加してくれる人も、この作品が面白いとかつまらないとか、そういうレベルのことには興味がないんですねもはや。一所懸命クオリティを高める為に頑張って、出来たものに関してはお客さんに持ち帰っていただく。

俳優は自分の身体を使いこなすプロフェッショナル

中屋敷さんが役者に求める要素はありますでしょうか。

■中屋敷:好きな役者さんとは違って、自分のお芝居に出てもらう役者さんに関しては、とにかく超、器用であること。ただ器用。だから良いって言う訳じゃなくて、そうあることで、全体の座組がスムーズに動いていくのではと思っています。器用な人が完璧にルールをこなしてから、さあ、ここから面白くしていこう、という発想ですので、前提条件で器用であればいいなと思っています。また、柿喰う客にはバレエやってる人とか、ミュージカルやってる人とか、なにか一芸を持ってる方が多くて。

なにかひとつ秀でたものがあると、そのレベルでものを考えられるようになりますよね。

■中屋敷:そうですよね。役者さんの魅力とか、どうしたら役者さんが良くみえるか、というのはぼくの仕事なんですよ。魅力がお客さんにうまく伝わらないなという時は、100%全部ぼくが悪い。つまらないなと思った時、どうしたら良く見えるのか頑張るのがぼくの仕事だと思っています。でも、それに対して役者さんがついて来れなければいけない訳で、絶対に。器用であることは絶対だな。つまり、器用であることはぼくのプロデュースが通るということであるから、面白くする作業をするのに一番大事だと思います。

ルールをこなせない場合はどうしますか。

■中屋敷:出来なそうだ、出来るかもしれないけど本番まで時間かかり過ぎる、という時はすぐ変えます。大体最初は無理なものを提示しています。結構難しいよな、出来ないよな、というものを。それと、簡単で面白くなるようなものを用意して臨んでいます。

この話は載せて大丈夫でしょうか。

■中屋敷:大丈夫です。大体皆分かってますから。最初ばーってやって、「ああうんごめん。出来ないよね、分かった分かった」って。「じゃあ普通のいきまーす」。最初に簡単なのやるよりは、冒険が観たいですよね。別に最初くらい難しいのやらせてよと。

でも出来たら。

■中屋敷:うわ、超面白いってなりますよね。でも出来ないと凄い怒りますね。それは演技の前段階だから。この台詞でこう、この台詞でこう動くっていうのは、演技の前段階だと。それは素人さん、演劇やってない人のほうが出来る可能性あるじゃない。

それは当然のスキルだと。

■中屋敷:当然のスキルですね。これはぼくの持論ですけど、俳優は役を演じるプロフェッショナルである訳じゃないんです。俳優は自分の身体を使いこなすプロフェッショナル。だからこの役になるって時に自分の身体を変化させる。だってそうじゃなきゃ、台詞を覚えて言うことも出来ないと思うから。芝居が全然下手クソでも、自分の身体に意識いってる人のほうがまだ使えるじゃんってなっちゃうので。

現代人の癖に広すぎる

戯曲のアイデアというのはどういうところから生まれてきますか。

■中屋敷:多作なんですね。もの凄い本数を年に書いてる人間なので、色々な評価を受けたりしてから逆算で考えていったんですけど、もの凄い生きることにモチベーションが高いことと、人に対して興味がある。裏を返せば自分に対してあんまり興味がない、ぼくという人間に。だから戯曲に自分が出てこないんです。こういう世の中だと自分は思う。普段から世の中に対して思っていることをそのまま戯曲に書いている。例えばこの間の一人芝居だと、テーマは「傷欲しがり症」。女子校生の話なんですけど、リストカットをしてみたいが為に、自ら頑張っていじめられっこになるという、とても皮肉なお話なんです。なんでそういうことをするかというと、リストカットするということは非常に女子高生ぽくて、青春っぽい。

(笑)

■中屋敷:これは中屋敷が普段からそういうことを考えているかというと、そうではなくて、痛いもの見たさ、怖いもの見たさ、現代人のきついものを見たがる感覚というものをテーマにしました。『恋人としては無理』という演目では、舞台上で役がコロコロ入れ替わるんですが、役割があれば誰でもいい感覚というものを提示しています。キリストの話なんですけど、キリストの役はいないです。皆キリストの話をしてるんですけれども、話している人がコロコロ変わる。それと持っているもの、着ているもので役が規定される。女の人の持っている小道具をぼくが奪うと、ぼくがその人の役になって。現代人の人を見ていない感覚というものを表現しています。戯曲のテーマとぼくの思想はすぐ通る感じかな。こういう物語をやりたいという感覚は全くない。だからぼくはこういう風に世の中思ってますよというのをそのまま出しています。

ではそれに合わせて物語を。

■中屋敷:そうですね。最近そういう物語減ったなと思っていて。どんどんお話というものが個人のお話になっていくんだけど、ぼくはシェークスピアとか観てるので、悲劇だったり人生劇だったり。テーマを広くした物語は何故勝てないかというと、段々皆世の中観なくなっているんじゃないかなって。段々個人主義が盛んになっていって、自分の話、自分のことにしか興味がないんじゃないかな。ぼくは自分に全く興味がなくて、世の中を、皆の状態とかを、新聞読むの大好きだし、世の中こうなっているということを勝手に妄想膨らますのが大好きだから、これはぼくの戯曲の特徴だと言われています。

ぼくは最近の音楽を聴いていて、そういう感覚を覚えます。個人的な歌ばかりで。広い視点で歌っている曲というのがあまりない。

■中屋敷:いよいよ世界平和について歌っているのはモーニング娘。だけになっちゃいましたからね。ジャニーズも昔は輪になって踊ろうとか歌っていたのですが。現代人の癖に広すぎるところがぼくの特徴だと言われています。もっとお前を出せ、と言われます。

反復練習を必要としない役者だと自負しています

役者としての活動はどうなのでしょうか。

■中屋敷:全然オファーが来ないですね(笑)。やりたいとは思っています。凄いやりたいんですけど、ありがたい話なんですが、演出と脚本のオファーがたくさん頂けているので。役者のオファーは来ないですけど……。まあ呼びづらくなってるのかなと。

そういう風に言っていればくると思いますよ。

■中屋敷:そうですね。アピールしないと不味いなと最近は思っています。ぼくは反復練習を必要としない役者だと自負しています。一回やったことを覚えるということはだけは凄いです。でも、一発で出来る役者が良いかと言えば、そうでもないので。結構初見とか強いですよ。

役者として、技術を高めていくということについては。

■中屋敷:自分の劇団にはちょこちょこと出ていたりするんですけど、色々な演出家さんに会わないと駄目だなと思っていて。ぼくは他の演出家さんの作品にほとんど出ていないので、最近。

中屋敷さんはどういうところに演劇の魅力を感じていますでしょうか。

■中屋敷:いいですねえ。なんだろう。ぼくは本当に演劇が好きなんですよ。ぼくは観劇のハードルが低いんですね。大体面白いんですよ。観に行って嫌いな演劇は、演劇を嫌いな演劇。

馬鹿にしてるような。

■中屋敷:演劇を馬鹿にしてたり、演劇つまんない、という風にやってる人たちが抱えていると出てしまうので。つまんなくても、こいつら本当に舞台楽しんでいる、というのがあれば観れるんですよ。それで、演劇のなにがいいのか。なにがいいんだろうなあ。たぶん、絶対嘘だから、フィクションだからかなあというのはあります。どんな嘘で楽しませてくれるんだろうという作戦が楽しいですから。なんで嘘が楽しいんだろう。シェークスピアの劇観てると嘘だらけですからね。なんだこれって。歌舞伎なんかも嘘だらけですよね。人間があんな風に喋る訳ないし。でもめちゃくちゃ大好きなんです、歌舞伎。ああいうものが観たいんだと思うんですよね。確かにそこに居るのは生きている人間なんだけど、やってることは普段あんなことしていない、ということを舞台上でやって、誰かが決めた台本とかきっかけとかのルールでやっている。いまあれは水を飲みたいんじゃなく、稽古で決められたルール通りに動いているんです。

嘘という部分に魅力を感じる。

■中屋敷:感じますね。非常に魅力ですね。

人間が人間じゃない状態

では最後に柿喰う客の魅力を。

■中屋敷:自信を持って言えるのは、こんなに人間が人間じゃない状態。こんなにフィクションな肉体になっている状態というのを。振り付けがあるからコンテンポラリーダンスとも準えられるのですが、コンテンポラリーダンスとは違うんですね。コンテンポラリーダンスはダンサーからの人間性が凄い出るし、訴えるものはあるんですけれども、柿喰う客ではガツガツ動けば動くほど人間から遠ざかっていくという。顔は演技してるんだけれどもどこか薄ら寒い。人間が人間じゃない状態。物語が物語じゃない。

表情にも細かい演出が入ってきますか。

■中屋敷:入ってきますね。顔見せてって言って、その顔でいこう、その顔でいこうって。人の筋肉の動かし方とかもの凄い見ちゃうので。たぶん君はこういう顔したほうがいいと思うとか。

筋肉とか詳しそうですね。

■中屋敷:でも我流なんですね。田舎を駆け回っていた人間なので。何筋がどうとかではなく、この人はこういう稼働域を持っているなとか。あとは顎がどれくらい開くかとか。手でどのくらい触れるんだろう。元々人間は動きやすく楽に動きますよね、日常生活では。全くそうではない動きをする。そうじゃない動きを目指しているんじゃなくて、そうじゃない違うルールの中で動いている。そのフィクション、虚構な人間の身体というもの、虚構のコミュニケーションというものが凄く楽しい。自分の意志ではなく、大いなるもの、誰かの意志で動いている。これを、リアルな生身のお客さんに観ていただくと、色々と考えることがある。

お客さんがその舞台を観て色々想像を膨らませたりするのは歓迎するのでしょうか。

■中屋敷:大歓迎ですね。一番多いのは、なんであんな喋り方するんだろうとか。お客さんはなにを考えていただこうと大丈夫です。絶対泣いて欲しいとか絶対笑って欲しいとかそういうのはないです。同じことをやっていても、めちゃくちゃ笑い取れることもあれば、凄い真剣に観てもらうこともあります。それはお客さんの勝手ですね。こちらも限定はしないようにしています。

戯曲を書く時に、ここに笑いを入れておこうとか、そういうのはありませんか。

■中屋敷:逆の考えですね。ここでお客さんにどうなって欲しいかというのもありますけど、ここでお客さんになにを見せつけるか。最初突き放して引き込ませてという作戦は考えます。お客さんをここで楽しませよう、ここで笑わせよう、というよりは、ここでこれを見せつけてやろうみたいな。もうちょっとでかい作戦立てます。

基本的に、あらゆることに対して視点が大きいですね。一本作るのにどのくらい時間かけているのでしょうか。

■中屋敷:短い時は3日で作ってますよ。「大変だー」みたいな時もありました。

色々なお話が聞けて本当に楽しかったです。ありがとうございました。

■中屋敷:ありがとうございました。