投稿者「名古屋演劇アーカイブ」のアーカイブ

藤澤智徳 さん

犀の角の荒井洋文さんからバトンを引き継ぎました、藤澤智徳(ふじさわとものり)と申します。信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団)のコーディネーターとして勤務する傍ら、個人でダンスの企画制作、またドラマトゥルクの仕事も(ほそぼそと)行っております。

簡単に今までの略歴を書きますと、高校・大学と演劇部に所属し、大学3年時にNPO法人DANCE BOXが主催する「国内ダンス留学@神戸」の制作者コースに入りました。これが制作者としての出発点でした。8ヶ月間みっちり、DANCE BOXのスタッフに制作のイロハを教えてもらいました。DANCE BOXには、今も定期的に顔を出していて、大げさでなく、自分の第二の実家と言える場所です。
大学卒業後は、株式会社梅田芸術劇場に入社し、3年間、票券業務に従事してました。梅田芸術劇場はいわゆる商業劇場なので、助成金や補助金などもなく、チケット売上=収入という興行の世界。そのシビアさをまざまざと体験できたのは、税金で仕事をしている今の自分にとっては、かなり貴重なことだったと思います。研修で飛び込み営業をしたことは今も忘れません。
梅芸を退職後、地元・長野県にUターンし、現在の(一財)長野県文化振興事業団に入社。2023年現在は入社5年目で、信州アーツカウンシルに異動してからは2年目になります。信州アーツカウンシルでは、おもに助成団体への伴走支援やAIR事業の運営を行っています。アーツカウンシルは基本的に中間支援団体なので、直接舞台の制作につく機会は減りましたが、長野県内の様々な文化芸術団体と関わることができて楽しいです。

【職歴】としては上記の通りで、これと並行しながら、個人の活動として、ダンスの企画制作・ドラマトゥルクを行っています。とは言っても、そんな頻度も多くなく、だいたい1年に1回くらいのペースで、だらだらとやってます。
直近では、KYOTOEXPERIMENT2023ディレクション・中間アヤカ『踊場伝説』(2023.10)という作品にドラマトゥルクとして参加していました。この作品は、京都の空き地に仮説の劇場をつくり、公開稽古やレパートリーの上演、また貸館などを行いながらその劇場を1週間運営するというもので、最後は重機で劇場ごと解体するという、文面だとかなり「?」な作品でした。観客の評価も賛否両論でした。
また、企画制作の面では、2022年の年初、犀の角(長野県上田市)にて振付家の木村玲奈さんのダンス作品『どこかで生まれて、どこかで暮らす。上田にて』をプロデュースしました。こちらは約2週間、犀の角で滞在制作を行い、最後は深夜2時に上演を行いました。深夜2時公演はダンサーへの負荷が大きく、いま思うと申し訳なかったのですが、観客の集中力がすさまじく、公演としては実りが多いものでした。

さて、荒井さんの質問にお答えしようと思います。荒井さんからの質問は「藤澤さんは「アーティスト」としての一面も持っていると私は感じています。アーティスト的な感性や振る舞いが、制作者としての振る舞いに与える影響、あるいはその逆にはどんなものがあるのか」というものでした。アーティスト的な感性・・・は、正直あまり持ち合わせていないと思うので、お答えするのが難しいのですが、プロデュースやドラマトゥルクとして作品に参加するときに心掛けていることはあります。それは、作品としてのクオリティよりも実験性を大切にするということです。アートの効果・効用は様々あると思いますが、社会にとって、アーティストにとっての実験場という側面が私は重要だと思っております。演劇の方々は、同じことを「想像力」という言葉を使って表現することが多いかもしれません。『踊場伝説』において劇場を最後に解体したのは、「劇場という構造物をダンス(身体)に可能な限り近づけるとどうなるか」という仮説を立て、それに対するアンサーとして「生モノのダンス(身体)と同じように、賞味期限を短くする=最後に解体する」ということをしました。また、『どこかで生まれて、どこかで暮らす。上田にて』の深夜2時公演は、「深夜2時にダンスを見ることは一体どういう経験なのか」という単純な疑問への答えとしてやってみました。想像上では、通常のソワレ公演と大差ないのでは、と思っていたのですが、観客の集中力や一体感が段違いに良く、こんな効果があるんだと驚きました。こういう、実験性を重んじる体質は、DANCE BOXで培われたものだと思っています。ただ、荒井さんのいう通り、最近はあまりこういう実験性を求める態度は、舞台芸術の世界だと少なくなってきているような印象です。

次のバトンは、柴田聡子さんに引き継ぎます。柴田さんは関東を拠点に活動しているフリーの制作者で、『踊場伝説』ではチーフ制作を務めておりました。めちゃくちゃ仕事ができる方で、尊敬の念しかありません。アーティストに寄り添って仕事を進める方という印象です。
柴田さんへの質問は「いま自分で企画したいプロジェクト・事業はなんですか?」です。柴田さんがいま、個人としてどのようなことに興味関心があるのか知りたいです。よろしくお願いします。